定量的構造活性相関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
定量的構造活性相関(ていりょうてきこうぞうかっせいそうかん)は単に構造活性相関と呼ばれることもあり、QSAR(=Quantitative Structure-Activity(またはAffinity) Relationshipの略)と呼ばれることもある。 化学物質の構造と生物学的(薬学的あるいは毒性学的)な活性との間になりたつ量的関係のことで、これにより構造的に類似した化合物の「薬効」について予測することを目的とする。 それに対し化学構造と物理的性質との関係をQSPR(Quantitative Structure-Property Relationship、定量的構造物性相関)という。両者は密接な関係があり方法論的にも共通する部分が多い。QSARを英語では「クェイサー」、日本語では「キューサー」と発音することが多い。
ハンシュCorwin Hanschによって研究が始められ、1964年にハンシュと藤田稔夫が発表した方法(Hansch-Fujita法)が代表的な方法として知られる。
方法としては、化合物の疎水性、対象とする化合物の構造を表現する数量(幾何学的構造を表す記述子、HOMOやLUMO(フロンティア軌道理論参照)のエネルギー、あるいはハメットの置換基定数、電気陰性度といった電子的記述子など)を抽出し、構造的に類似する一連の物質に関してこれら数量と活性との関係を統計学的に(回帰分析などを用い)検討する。薬効であれ、毒性であれ、酵素や受容体など生体内物質と薬剤との相互作用である。QSARではその一方のみを指標化して統計解析するので予測性はまったくといっていいほど無く、多数の薬剤の中から選抜する指標以上の意味は持たない。
計算化学の一部門であり、方法的には計算機化学ということができる。