床の間
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床の間(とこのま)とは、日本住宅の畳の部屋に見られる座敷飾りの一つ。ハレの空間である客間の一角に造られ、床柱、床框などで構成されている。掛け軸や活けた花を飾る場所である。
中世の押し板が起源であり、典型的には近世初期の書院造、数寄屋風書院において完成した。書院造においては、上座に座る人物の格式を示すものであったが、その後の和風住宅では、 客人をもてなすために季節に合わせた掛け軸や花を飾り、住まい手の心配りを示す存在であった。(従ってもっぱら家族が使う茶の間などでは床の間を造る必要はない)
床の間のある部屋においては、床の間側を上座とし、その部屋の中心となる。(室内空間に方向性を与えるという点では、洋間のマントルピースに相当するともいえる)
江戸時代には、庶民が床の間を造るのは贅沢だとして規制されていたが、明治時代以降になると客間に床の間を造るのが一般的になった。現在では掛け軸をかける習慣が衰え、畳の部屋でも床の間を省略することも多い。旅館では床の間がテレビやセーフティボックス(要は金庫)を置くスペースになり下がっていることもよく見受けられる。
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[編集] 床の間の構成
[編集] 床の構成
- 床柱 床の間で最も目立つ部材であり、書院造では角柱が基本であるが、私邸などでは数寄屋造りの影響から、節つきの丸木等、珍しい銘木を用いることも多い。
- 落し掛け 床の間上部の横材で、小壁を受ける。
- 床框(かまち) 畳の面より一段上げるようにして、漆塗りの横材(床框)と畳を置く。
- 壁 一般的な床の間では左官仕上げの壁とする。
- 近世初期の園城寺光浄院客殿、二条城二の丸書院、本願寺書院などは床框を用いず、一枚板(押板)を置く。また、これらは張付け壁に障壁画を描いている。
[編集] 本床の間
床の間は、床を単独で配置するだけではなく、書院造の伝統を受け継ぎ廊下(採光)側に付書院、反対側に脇棚を備える事が多い。これを本床の間という。
- 付書院 単に書院とも言う。出窓状に奥行きを持たせその奥に書院欄間、障子が配される。
- 床脇 床を挟んで付書院と反対側に配される空間。床脇棚と袋戸棚(襖付の棚)が設えられる。床脇棚は、二段の棚を組合わせた「違い棚」代表的だが、施主の好みにより「釣り棚」等他の様式が採られることもある。
[編集] その他
神棚は天照大御神や氏神を祀るものであるのに対し、床の間は家屋にまつわる神様が存在する場所として大切にする。
家の中で一番良い場所であるので、ここに仏壇を設置する場合もある。