復水器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
復水器 (ふくすいき) はタービンやシリンダー内で仕事を取り出した後の水蒸気(低圧の湿り蒸気)を等圧冷却して凝縮させ、低圧の飽和液に戻す部分を指す。ここでできた飽和液(水)は給水ポンプへ行く。(ランキンサイクルの状態で4→1)
[編集] 種類・形式
- 表面復水器 : 冷却水が復水器冷却管内を通り、タービン蒸気とは直接接触しないもの。国内の火力・原子力発電所では、海水を冷却水としているため表面復水器が用いられる。
- 直接接触復水器 : 冷却水を復水器内に導入し、タービン蒸気と混合するもの。国外の内陸型火力・原子力発電所や国内外の地熱発電所では、冷却塔でタービン蒸気が凝縮した飽和液を冷却しているため、直接接触復水器が用いられることがある。
[編集] 構造・性能
- 胴 : 鋼製の箱形容器で、負圧に耐えるため内部に補強が設けられる。大型発電プラントではタービンの真下に配置され、低圧タービンの排気を直接受ける。胴下部には凝縮した飽和液が溜まるピットがあり、ホットウェルと呼ばれる。
- 冷却管 : 胴には数多くの冷却管が貫通しており、冷却管内部に冷却水を通過させて胴内の蒸気を冷却し、凝縮させる。火力発電所では通常はアルミニウム黄銅が用いられるが、特に腐食し易い部位にはチタンが用いられる場合がある。なお、直接接触復水器は冷却管の代わりに冷却水を胴内に散布するノズルが数多く設けられ、冷却水と蒸気とを混合している。
- 真空度 : 復水器圧力が低くなるほどタービンの熱効率は高くなるが、復水器の伝熱面積や冷却水量が増加するため、設備費や運転コストが増大するため、復水器圧力は両者のバランスを考慮して決定される。国内の火力・原子力発電プラントは復水器圧力50mbar(38mmHg/真空度では722mmHg)で設計されることが多いが、北海道のように海水温度が低い地域では、より低い復水器圧力が採用されることもある。
[編集] 付属設備
- 空気抽出器 : 低圧タービンは負圧となっているため軸受部の隙間などからタービン内に微量の空気が流入する。この空気が復水器内に滞留すると、真空度が悪化し発電効率を低下させる。そのため、エゼクターや真空ポンプなどの空気抽出器により復水器内の空気を除去している。特に地熱発電では蒸気に含まれる非凝縮性ガスが多いため、大型の空気抽出器が必要である。
- 鉄イオン注入装置 : 海水による冷却管の腐食を防止するため復水器入口海水に微量の硫酸鉄(II)を注入して管内面に保護皮膜を形成する。
- 塩素注入装置 : 冷却管内にムラサキイガイなどの海生生物が付着・繁殖することにより、冷却効率の低下・圧損の増加・管の腐食などが発生するため、復水器入口海水に微量の塩素を注入して海生生物の繁殖を防止している。通常は海水を電気分解して次亜塩素酸を発生させる。