循環器学
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循環器学(じゅんかんきがく、英Cardiology)とは、人体の心臓および血管等の循環器(Circulatory)系を中心に診療研究する内科学の一分野。
語源でもある「Cardiology(心臓学)」という名称からわかりように、主に心臓を研究する分野として発展して来た。主な学説に血液循環説等がある。
目次 |
[編集] 症候
- 心雑音
- 心不全
- 動悸
- チアノーゼ
- 心房細動(Af)
- 心房細動(しんぼうさいどう)は、心房が細かく動く事。
- 検査
- 心電図
- P波消失 : 心房の活動が分散するため、心房の電位変化を示すP波が消失する。
- f波出現 : f波は基線の動揺の事。分散した心房の活動がf波として記録される。
- RR間隔の不整 : 心拍が周期性を失う。
- 心電図
[編集] 虚血性心疾患
[編集] 不整脈
- 頻脈・徐脈・心房細動と入った心臓の動作が異常な疾患を見る。診断や治療は、心電図判読や抗不整脈薬の投与が中心になる。近年ではカテーテルアブレーション法という治療法も確立している。心室頻拍(VT)や心室細動(Vf)に対しては植え込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator ICD)の挿入が行われている。
[編集] 弁膜症
弁膜症は、心臓の中にある弁が正常に機能しなくなる疾患の総称。弁膜性心疾患とも言う。
[編集] 先天性心疾患
- 心房中隔欠損症(ASD)(ICD-10: Q21.1)
- 心室中隔欠損症(VSD)(ICD-10: Q21.0)
- 右心室と左心室を隔てる心室中隔に穴が開いた病気。短絡性心疾患の一つ。病態は、心臓は左室系のほうが右室系よりも高圧なので、血液が左心房から右心房へ流れる左右短絡が生じて、肺高血圧を来たす。症状は、心室系は心房系よりも高圧系なので心房中隔欠損症よりも圧が高く、欠損孔を通過する血流がジェット流を生み出す結果、心内膜に傷が付き、感染性心内膜炎を起こしやすい。検査は、静脈カテーテルで右心房血から右心室血への血中酸素飽和度の上昇を認める。治療は、手術療法がある。手術療法は、人工心肺を用いて血液を体外循環している間に開胸開心して心室中隔欠損孔を閉じる。副作用は、心室中隔にはプルキンエ線維が走っているため完全房室ブロックを起こす事がある。
- 心内膜床欠損症(ECD)(房室中隔欠損症)(ICD-10: Q21.2)
- 病態は、心房中隔欠損と心室中隔欠損と僧帽弁閉鎖不全と三尖弁閉鎖不全を併せた状態。短絡性心疾患の一つ。発生の段階で僧帽弁前尖が割れる。症状は、ダウン症を合併しやすい。検査は、静脈カテーテルで右心房血から右心室血への血中酸素飽和度の上昇を認める。治療は、手術療法がある。手術療法は、人工心肺を用いて血液を体外循環している間に開胸開心して、僧帽弁や三尖弁と言った房室弁を修復して、中隔欠損部を縫い合わせる。しかし術後も房室弁の閉鎖不全は残りやすく、副作用として刺激伝導系の損傷も多い。
- エブステイン奇形(ICD-10: Q22)
- 症状は、心房中隔欠損症を合併することが多く、右左短絡が生じてチアノ-ゼを来たす。チアノ-ゼ性心疾患の一つ。治療は手術療法を行う。この手術は三尖弁挙上転位術(Hardy法)と言う。
- 単心室(ICD-10: Q20.4)
- 右心室と左心室を隔てる心室中隔が極めて少なく欠損孔が大きい先天性の心臓の病気。短絡性心疾患の一つ。症状は、左右短絡が生じて肺高血圧を来たし、右左短絡が生じてチアノ-ゼを来たす。チアノ-ゼ性心疾患の一つ。
- 左心低形成(ICD-10: Q23.4)
- 左心の発達が不十分な病気。治療は、Norwood手術や、心移植等を行う。予後は不良。
- ファロー四徴症(TOF)
- 総肺静脈還流異常症(ICD-10: Q26.2)
- 病態は、右房負荷が掛かり、右室肥大を来たす。
- 動脈管開存症 (PDA) (ICD-10: Q25.0)
- 動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)は動脈管が出生後も開存した病気。
- 概念
- 先天性血管疾患の一つ。胎児期に肺動脈と大動脈を結ぶ動脈管が出生後も閉じずに開存している。胎児循環に於いては右心系の方が新鮮な動脈血を持っているので、動脈管を介して動脈血を体循環側へ右左短絡をして、中枢神経系の成長を促す。短絡性心疾患の一つ。
- 病態
- 検査
- 身体基本検査
- 聴診
- III音 : 収縮期に左心室から出た血液が動脈管を通って肺動脈へ流れ、その分だけ左心房容量が多くなり、その分だけ拡張早期に左心房から勢いよく来た血液が左心室壁を振動させる事で生じる。
- 聴診
- 静脈カテーテル検査
- 右心室血から肺動脈血への血中酸素飽和度の上昇を認める。
- 身体基本検査
- 治療
- 根治療法として、手術療法を行う。手術は、開胸術ではなく血管内カテーテル手術で行う。この血管内カテーテル手術はPorstmann法と呼ばれ、中心静脈からカテーテルを入れて、順行性に右心房、右心室、肺動脈、動脈管へ向かい、開存した動脈管を閉じる。他の手術法として、開胸して動脈管を糸で縛る動脈管結紮術もある。
- 大動脈縮窄症
- 大動脈弓/胸部下行大動脈移行部での限局的な狭窄。他の心奇形を合併することも多いが、単純型で無症状のものは成人になって上半身の高血圧で発見されることもある。
- 完全大血管転位症(TGA、TAG)(ICD-10: Q20.3)
- 左心室から肺動脈が出て、右心室から大動脈が出る先天性の心臓と血管の病気。短絡性心疾患の一つ。本来なら左心室から大動脈が出て右心室から肺動脈が出る。発生の段階で奇形が生じる。このままでは体循環と肺循環が繋がっていない為出生できないが、心房中隔欠損症を合併することが多く、ここで両循環血が混合する場合は出生できる。分類はI, II, III型に分けられる。症状は、左心室から肺動脈が出る為に左右短絡が生じて肺高血圧来たし、右心室から大動脈が出る為に右左短絡が生じてチアノ-ゼを来たす。チアノ-ゼ性心疾患の一つ。特にI, III型で右室肥大、II型で両室肥大を来たす。治療は手術療法によって根治できる。この手術はJatene手術と言う血流転換手術で、人工心肺を用いて血液を体外循環している間に開胸して、大動脈と肺動脈を切って付け替える。
[編集] 心筋症
- 特発性拡張型心筋症
- 心筋が薄く伸びて心臓の内腔半径も外形半径も大きくなる病気。病態は、左心室が全体的に収縮力を失っている。
- 肥大型心筋症
- 心筋が変性して心臓の内側へ厚くなり、心臓の内腔の半径が小さくなる病気。分類は、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)、等に分けられる。検査は、針生体組織検査では心臓の筋肉細胞の向きがばらばらになった錯綜配列が肥大型心筋症に特徴的に認められ、心臓超音波検査では左室流出路狭窄に伴って僧帽弁前尖を支える乳頭筋が前方偏位することによって起こる僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)や大動脈弁の収縮中期半閉鎖や左心室壁の非対称性肥厚(ASH)が認められる。
- 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)
- 肥大した心筋で心臓の出口が塞がる病気。
- 病態は、左心室の出口である左室流出路が肥大した心筋により狭窄する。
- 症状は、左室流出路狭窄による胸(前胸部)の痛み、等がある。
- 検査
- 聴診では、III音やIV音を認めることから奔馬性リズム(ギャロップ)を認める。静脈還流量を増やすと狭窄が緩和されて心雑音が減り静脈還流量が減ると狭窄が高度になって心雑音があがる点が、他の弁膜症疾患と対照的である。
- 心臓超音波検査では心室中隔が左室後壁よりも1.3倍以上厚くなる非対称性肥厚(ASH)を認める。
- 左室造影検査では収縮期に左心室内腔が極端に狭くなる舌状所見を認める。脈波は二峰性脈を認める。
- 心臓カテ-テル検査では左室流出路の前後で血圧較差が見られる。心室期外収縮があると本来次に来る筈の収縮は不応期によって無くなり、次の次の収縮が予定通りやって来る事がある。すると期外収縮からおよそ1.5回分の拡張期を使ってパワーを貯めるので、期外収縮後の収縮は通常よりも強力に起こる。これを期外収縮後増強と言う。期外収縮後増強によって収縮力が高まると流出路狭窄は更に高度になり、左室内圧がとても高くなる一方、大動脈圧は低下する。この期外収縮後の圧較差をブロッケンブロー現象と言う。
- 治療は、左心室内腔を拡めるようにする。左心室内腔を拡めるには収縮を弱めたり、血流量を増やしたりする。心筋収縮力をあげるβ受容体刺激薬やジギタリスは禁忌であるし、静脈拡張により血液還流量を減らすニトログリセリンも良くない。保存的治療法には化学療法がある。化学療法では心筋収縮力を弱める為にβ受容体斜断薬やカルシウム拮抗薬を用いる。保存的療法では症状の改善が得られない場合は手術療法を行う。手術は心房と心室を同期してペーシングするDDDペースメーカーの埋め込みや、経皮的に挿入したカテーテルにより選択的に冠動脈(左前下行枝から分岐する中隔枝)へアルコールを注入し人為的に心筋梗塞を起こし、心筋を菲薄化し流出路狭窄を改善させる経皮的心筋焼却術(PTSMA)等を行う。
[編集] 感染性疾患
- 感染性心内膜炎
- 心臓の内側に細菌が感染し、心臓弁の穿孔等を起こす。原因菌は口腔内常在菌の緑色連鎖球菌。多くは心臓内でジェット血流を生み出すような先天性疾患患者が掛かる。検査は動脈血採血を何回か行い原因菌の同定と抗生剤の感受性検査を行う。特に発熱時に検出率が上がるという事はない。治療は感受性のある抗生剤を4週間ほど静脈注射する。弁疣贅が大きい場合は手術で切除することもある。
- 急性心筋炎
- 収縮性心膜炎
- 梅毒性大動脈炎
- 梅毒性大動脈炎(ばいどくせいだいどうみゃくえん)は、梅毒感染による大動脈炎。
- 原因
- 梅毒感染第4期
- 病態
- 上行性大動脈に動脈炎が生じる。
[編集] 血管疾患
[編集] 動脈性疾患
[編集] 大型動脈の疾患
- 梅毒性大動脈炎
- 大動脈炎症候群(高安病、高安動脈炎)
- 検査
- 基本的身体検査
- 鎖骨下動脈の狭窄などにより血圧に左右差が生じる。
- 血清生化学検査
- 赤血球沈降速度が亢進、CRP陽性、等の炎症所見が認められる。
- 基本的身体検査
- 検査
- 大動脈瘤
- 解離性大動脈瘤(ICD-10:I71.0)
- 大動脈の中膜に血液が入り込んで内膜と外膜を引き裂き、外膜が突出したもの。内膜と外膜が引き裂かれた状態から解離性と名がつく。解離部位が広範囲に及ぶ場合は外膜の突出もなだらかになり瘤状ではなくなるが、本症に含まれる。
- 病態は、大動脈内膜の一部が傷ついて血液が溢れ出すものの外膜が破れない場合に、血液が中膜を引き裂きながら進むもの。
- 原因は、動脈内膜がもろくなる動脈硬化、梅毒、マルファン症候群、等がある。
- 症状は、突然始まる強い胸(背部)痛。その後中膜が上から下へ引き裂かれるのに伴って、ぴりぴりと引き裂かれるような痛みが上から下へ発生していく。
- 分類は、ドゥベーキー分類やスタンフォード分類等がある。
- 検査は、造影CT検査では大動脈の中膜と外膜の間に溜まった血腫が認められる。血腫が溜まった腔は本来の血管腔では無いので偽腔と言う。偽腔は血管腔よりも造影剤の出入りが少ないので薄く見える。
- 治療
- 初期治療は、血圧を低くすることと不整脈による血圧の不安定を予防する為に、β遮断薬を用いる。
- 根治治療は、手術療法を行う。上行大動脈の解離を含むドゥベーキーI型・II型・スタンフォードA型は破裂の危険性が高いため緊急手術を行う。
- 胸部大動脈瘤(ICD-10:I71)
- 胸部大動脈にできた瘤。
- 検査
- 基本的身体所見では、声帯の運動をつかさどっている左反回神経期が大動脈弓をぐるっと反回するので声がかすれる嗄声、物が飲み込みにくい嚥下障害、胸背部違和感、等がある。
- 胸部レントゲン写真では、心臓の左第1弓の突出が見られる。
- 胸部造影CT検査では、瘤の状態が詳細に観察される。
- 診断は、CTやMRIにより径の拡張が認められれば確定診断となる。
- 腹部大動脈瘤
- 腹部大動脈にできた瘤
- 統計は、腎動脈分岐部より末梢側に95%が発症する。
- 解離性大動脈瘤(ICD-10:I71.0)
- 閉塞性血栓血管炎(へいそくせいけっせんけっかんえん、ビュルガー病、バージャー病、Buerger病)(ICD-10:I73.1)
- 末梢血管に炎症が起こって閉塞する病気。
- 原因は不明だが、喫煙によって増悪し禁煙によって寛解する。
- 統計は、20才~40歳の男性に好発する。
[編集] 中型動脈の疾患
[編集] 小型動脈の疾患
[編集] 静脈性疾患
[編集] 心膜疾患
- 心膜炎
- 病態
- 心外膜は心臓が潤滑に動くための潤滑剤である心膜液を入れる心膜腔を形作る膜なので、心外膜に炎症が起こると心臓の動きが制限される。
- 分類
- 急性心膜炎
- 収縮性心膜炎
- 心タンポナーデ
- 病態
[編集] 血圧の異常
[編集] 検査
- タリウム心筋シンチグラフィ(タリウムシンチグラフィ、Tl心筋シンチグラフィ、Tlシンチグラフィ)
[編集] 関連
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