播種
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播種(はしゅ)とは、植物のタネをまくこと、つまり種まきである。それから転じて、タネをばらまいたように、細かい点が無造作・無秩序にある状態を言う。たとえば「腹膜は種」は、がん(癌腫)が、タネをまいたように腹膜に転移している状態である。ここでは本来の播種、園芸における種まきに関する諸々を述べる。
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[編集] タネから栽培できる植物
日本人は気が短いのか、また、まだ趣味としての園芸が成熟していないのか、タネとして売られているのはほとんどすべて一年草である。最近はその一年草も苗を買ってきて植える人が増えてきた。しかし日本で最大の種苗会社であるサカタのタネやタキイ種苗でさえ、タネの種類は数百種であるのに、欧米には数千から一万種以上のアイテムを扱う種苗商がいくつもある。そのなかには、花が咲くまでどころか、発芽までに一年以上かかる代物もあり、その手のものはあまりおすすめできないが、意外に簡単にタネから作れるものもあり、そうしたものを書き出しておく。
[編集] 一年草
春まきのヒマワリ、サルビア、アサガオ、ホウセンカ、マリーゴールド、ヒャクニチソウ、ケイトウ、アゲラタムなどと、秋まきのパンジー、デージー、キンセンカ、スイートピー、ケシ、キンギョソウ、エゾギク、リビングストンデージーなど、それに夏蒔きの葉ボタンとプリムラがある。
[編集] 二年草
園芸上は、発芽してから開花・結実して枯れるまで、一年以上・二年以内のものを二年草という。春播きのジギタリス、秋まきのカンパニュラがよく知られている。
[編集] 球根類
球根も大半がタネも売られている。チューリップなどはタネから開花までに、5年ほどかかるが、北陸や東北地方でないと、開花する前にモザイク病にやられてアウトである。球根類でおすすめは、ダリアである。春播きすると、大輪でもポンポン咲きでも、すべて秋には開花する。そほほかグラジオラス、カンナや秋まきのフリージア、ラナンキュラス、アネモネも一年か二年で開花する。
[編集] 多年草
意外に簡単にできるのが菊である。小菊は十分に切り花、とくに仏花に使えるものができる。厚物や果物などの観賞菊も、やはりタネをまいた年の秋に開花するが、重ねの良い大輪咲きはなかなか出ないようである。ガーベラやゼラニウムなどは、国内でもタネが売られており、播いた年に開花するが、他の宿根草も、開花までさほどの年月はかからない。
[編集] 木本
凡才用の松柏類やカエデ、ハゼの木などは、ほとんどタネから作られている。メタセコイヤやユーカリのように、タネから1年で1メートル近く名ものもある。花木類は、開花までに2,3年から10年くらいかかるものまである。果樹類のタネも売られているが、これは品種ものを接ぎ木や挿し木で増やした萌芽断然良い。タネからまいたものは、果実が小さく、また味もまずいので、タネからは作らない方がよい。
[編集] サボテン
サボテンはほとんど栽培業者が実生で栽培したものである。タネから直径5cmくらいの玉にするまで数年かかるが、それでも「金鯱」や「兜丸」などのサボテンが、双葉からだんだんそれらしい形に成長するのを観察しているのは興味深いものである。
サボテンも発芽には水が必要である。それに一般の草花より遙かに高い温度が必要である。小さな浅鉢に砂またはサボテンの培養土を満たし、6月から8月に鉢に蒔き、タネが隠れる程度に覆土し、芽が出るまでは受け皿をあてがい、日陰においておく。発芽したら密生したところを間引き、徐々に乾燥させてゆく。
[編集] タネの播き時
種まきで一番大事なのは、播き時である。秋まきでは、数日の違いで、生育に大きな差が出ることがある。また、植物にはそれぞれに発芽適温があり、適温でないと全く発芽しないこともある。
[編集] 春まき
よく、タネをまくには春と秋の彼岸頃が井伊と言われるが、これは間違いである。秋分の頃は最低気温が15~20℃で、秋まき草花の発芽適温だが、春分の頃は東京でまだよく霜が降り、氷が張ることもある。コスモスやマリーゴールドなど、発芽温度の低いもので、ソメイヨシノが散り始めた頃、サルビアや朝顔はゴールデン・ウィークの頃、春播き草花で一番発芽温度の高いインパティエンスは5月中下旬がよい。春播き種はだいたい、温度が高ければよく発芽するので、わざとマリーゴールドやコスモスなどを7月頃にまくと、秋にコンパクトな姿で花をつける。
[編集] 秋まき
秋まきの草花は、春播きのものより発芽温度が低いが、冬に向かうため、生育適温のうちに十分な大きさにしておかないと、貧弱な花しか咲かないことになる。暖かい地方では、パンジー・キンセンカ・花菜・ヴェニディウム(寒咲蛇の目菊)・ヤグルマギクなどは、9月5日頃までに播くと、年内に花を見ることができる。
秋まき草花の発芽をよくするには、通販のカタログは5月下旬に発行されるので、タネを早めに注文し、タネが来たら一ヶ月以上冷蔵庫の野菜室に保管して、8月下旬から9月5日頃までに播種するようにする。キンギョソウや撫子類、ポピーなどは秋分頃でよい。ヴァーベナやルピナス、リヴィングストンデージーなどは、10月になってから播いた方がよい。今はタネの袋に、地播き時を色分けした地図や、発芽適温が出ている。春播きでは最高気温がその適温になったら、秋まきでは最低気温が発芽適温になったらすぐに播くのがよい。
[編集] 夏蒔き
ハボタンは6月下旬から8月中旬頃が播き時である。また、プリムラは6月から7月が播き時である。これらは秋になってから播くと、十分に生育しないうちに観賞期を迎えてしまうからであるが、夏はやはり発芽しにくく、病虫害も多い。
温室で栽培される鉢物は、上に掲げたプリムラもそうだが、特別な播き時のものがかなりある。設備も必要出し管理も大変なので、詳しく知りたい型は、専門書を読んでほしい。
[編集] 取り播き
採集したタネをすぐに播くのを取り播きという。松柏類やカエデ、ツバキ、ハゼの木など、木本類では取り播きにしたほうがよいものが多い。木本類のタネは、案外乾燥に弱く、また、種類によっては、いったん寒さにあって暖かくならないと、つまりタネが、春が来たことを自覚しないと、発芽しないからである。
[編集] タネを買うには
[編集] 国内での買い方
ポピュラーなものであれば、街の花屋、園芸店、ホームセンターなどで手にはいる。しかし、店によっては管理がおざなりで、秋まきのタネを、真夏の日向に陳列いるところがある。タネは播くまでは、冷蔵庫に保管するのが望ましいほどであるから、涼しい場所においてあるショップから買うべきである。
新しい品種や、珍しいものは、通信販売で入手するのがよい。今でこそ盛んなカタログ販売であるが、通販の元祖は、1887年にタキイ種苗が売り出したトウモロコシその他の野菜のタネである。かつては第3種郵便で、種子・球根・苗ものなどが100g6円で送れたこともあり、種苗の通販は盛んであった。通販のカタログは、11月末と5月末に出る。ただし有料で1冊200~500円くらいである。種苗の代金は先払いで、郵便振替による送金が多く、送金手数料や商品の送料はさほど高くない。
[編集] 外国からタネを買うとき
インターネットの普及で、外国からタネを買うのも容易になった。欧米の種苗カタログは、日本のもののような美しい絵や写真が少なく、説明文のほうが多い。しかも、植物の名前(学名)や科名などがラテン語表記なので、慣れないととまどうかもしれないが、検索サイトでその学名を入力して日本語のサイトを探すと、写真や説明が見られる。
「裏サイト」からマリファナなどのタネを買うのはもってのほかだが、大手の種苗会社で売られているものでも、ケシの変種ボタンゲシ(Papaver somniferum var paeoniflorum)はどは、あへん成分がそれ専用の白花一重咲き種に比べ、桁違いに少ないため、欧米では園芸植物として自由に栽培できるが、日本では今のところあへん法により栽培禁止になっている。
圃場==種まきの実際==
[編集] 露地播き
ほとんどの野菜のタネや、安価な袋物の草花のタネなどは、花壇や畑など、露地に直截播くことができる。ケシ類・ハゲイトウ・スイートピーなど直根性の植物は、原則として栽培地に直截播く直まきが行われる。野菜などを本格的に栽培する圃場では、畝(うね)を作るが、家庭菜園や花壇では、十分に耕したら、30~50cmくらいの間隔で筋を造り、そこへ適当にタネを落として行く。普通、五日から十日くらいで発芽するので、混み合ったところを間引き、初めの間引きでは5cm間隔、最終的には15~20cm間隔にする。園芸になれない人は、間引きがかわいそうあるいはもったいなくて、密植になってしまいがちであるが、密植は、苗が徒長するだけでなく、病虫害にも遭いやすい。間引きも園芸の技のうちである。
[編集] 種まきに適した土
f1(一代交配種)などの高価なタネは、種まきに適した土に播き、一粒でも多く発芽させたいものである。
種まきに適した土は、病原菌に汚染されておらず、肥料分がほとんどないこと。また、団粒構造で、適当な大きさのものであることだ。「種まきの土」として売られているものの中には、ピーとを粉と言うより、吹くとほこりになって飛んでいってしまうほど細かいものがあるが、これを鉢などに入れて使うと、鉢の中が泥沼状になり、使い物にならない。
ヴァーミキュライトが種まきに理想的な用土とされていたが、最近問題になっているアスベストを含むものがあり、使用には注意が必要である。パーライトや赤玉土などなら問題はないだろう。鉢や箱に播くときには、底のほうにはゴロ土と呼ばれる粒の粗いものを入れ、上の方1cm暗いだけ、細かい粒を入れる。トレーの中でピーとをふやかして使う種まき容器が出ており、便利であるが、発芽したらすぐに中の水を切って乾かし気味にして育てるのがコツで、そうしないと苗が徒長(モヤシ状になること)してしまう。
[編集] 覆土について
覆土(タネの上にかける土)は、大粒のタネではタネの直径の2~3倍、比較的小さなタネは、タネが見え隠れする程度がよい。ごく細かいタネ(微細種子)には、好光性と言って、発芽にある程度の光線が必要なものがあり、その場合は覆土をせず、タネをまいた鉢を明るい日陰に起き、下に受け皿をあてがって吸水させる。
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