海軍条約文書事件
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海軍条約文書事件 (The Adventure of the Naval Treaty、1894年)は、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ作品の1つ。「ストランド・マガジン」1893年10月号初出。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
聖典にはワトスンの結婚直後の7月に起こった事件と記されている。
ワトスンの古い学友で、名門の家の出のパーシー・フェルプスから依頼を受ける。現在の彼は上院議員の伯父のひきで外務省の高官を務めている。10週間前、イギリスとイタリアの間で締結が内定した旨の海軍条約文書を謄本化するように、と伯父から極秘裏に指示された。同僚が退庁するのを待って写本に取り掛かったのだが、ほんの僅かなすきに発表の日まで内容を機密にしておくべきその原本が盗まれてしまったのだという。フェルプスはショックで錯乱状態に陥り、今までずっと寝込んでいたという。
誰がどうやって文書を盗んだのか、そしてその文書は今どこにあるのか、ホームズが調査を始める。文書の内容が公表されれば間違いなく国内外が紛糾する筈だが、未だ何事も起きていない事から、条約は国内に、そして犯人の手元に残っているはずだとホームズは推理する。
フェルプスから話を聞いた翌日、再びウォーキングを訪れると、フェルプスの部屋に泥棒が侵入しようとしたという。ホームズはこの話を聞き、策略を巡らす。常に側にいて看病を続けていたフェルプスの婚約者のハリソン嬢に、夜までフェルプスの部屋にいること、部屋を出るときは鍵をかけることを指示し、ホームズたちはフェルプスを連れてロンドンへ戻るという。ロンドン行きの汽車が出発する直前、今度はホームズはウォーキングに残ると言い、ワトスンとフェルプスだけをロンドンにやる。
この物語では、取り戻した文書をフェルプスの朝食の蓋の中に隠しておくなど、ホームズの芝居がかった面を見ることができる。
[編集] 矛盾点・疑問点
冒頭で「第二の汚点」事件について語られているが、同名で記録されている事件と一致しない点が多い。
また、事件の概要を聞くために向かったウォーキングからロンドンへ戻る途中の列車の中で、ホームズはすでに調査を進めているという。だが、ウォーキングに着くまで事件そのものがわからなかったわけであるから、調査を行うことは不可能なのである。
さらに、2ヶ月も重要文書が盗まれたままなのに外務省がそれほど大騒ぎにしていないことにも疑問が残る。