特命全権大使
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特命全権大使(とくめいぜんけんたいし Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary)とは、外交使節団の長の最上級の階級であり、接受国の元首に対して派遣される。
なお、外交使節団の長の第2階級を公使あるいは特命全権公使といい、第3階級は代理公使という。特命全権公使は接受国の元首に対して、代理公使は接受国の外務大臣に対してそれぞれ派遣される。
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[編集] 概要
各国の元首に対して派遣されるものであるが、国際連合などの国際機関に対しても派遣されており、これも一部を除き全員、各国の外交官(民間人で外交官としての資格を与えられたものも含む)である。一部というのはユネスコやWHOなどの専門機関の大使や特使のことで、これら専門機関の場合の外交使節は、いわゆる外交官以上の専門的知識を持った科学者、医学者、医療関係者、学会関係者などから選ばれる(無論、国際法上は、外交官としての特権を有する)。
[編集] 日本の特命全権大使
日本の場合、特命全権大使は大使館又は政府代表部の在外公館の長(在外公館長、または単に館長)であるが、まれに、複数名の特命全権大使を擁する在外公館があり(国際連合日本政府代表部など)、その場合、上位者が館長に、次席が次席館員となる。必ずしも外務キャリア官僚しか就任できない訳ではなく、他の省庁(例:宮内庁、警察庁等)や民間からの外部登用や、ノンキャリア職員からの任命もある。在外公館に勤務しない大使は待命大使と呼ばれる。
[編集] 呼称
一般的には略して大使または全権大使と呼ばれるか、「駐○○大使」(○○国に派遣されている日本国の大使)・「駐○○××大使」(○○国に派遣されている××国の大使)と呼ばれる。この際の「駐」は「駐箚(ちゅうさつ、公務員が駐在すること)」の略であり、自ら名乗る場合「○○国駐箚特命全権大使(姓名)」と名のることがある。同様に、格式ある場では「○○国駐箚特命全権大使(姓名)閣下」と呼ばれる。
[編集] 席次
大使の席次は信任状の捧呈式の順により定められ、自国に駐在する大使の中で最も在任期間の長い大使は外交団長と呼ばれる。
[編集] ヴァチカン大使の場合
ローマ教皇の派遣する大使には2階級あり、司教や大司教がなるノンスと枢機卿がなるレガがある。[要出典]
[編集] イギリス連邦の場合
イギリス連邦の所属国同士は大使を交換せず、高等弁務官 (High Commissioner)と呼ばれる使節長を交換する。
[編集] 任命
特命全権大使は特別職の国家公務員かつ外務公務員であり、その任免は、外務大臣の申出により内閣が行い、天皇がこれを認証する。また、特命全権大使の信任状及び解任状は、天皇がこれを認証する。
[編集] 信任
特命全権大使は、接受国の元首に対し、派遣国の元首(日本国の場合は天皇)が派遣する。その際に派遣国の元首から信任状が託され、大使が接受国の元首に提出する儀式を信任状捧呈式という。
[編集] 職務
派遣元の国を代表するもので、派遣先国との外交交渉、全権代表としての条約の調印署名、滞在する自国民の保護などの任務を行なう。
[編集] 選任
現在の日本では慣例的に外務省職員(特にキャリア外交官)からの任命が多くを占めているが、他省庁の職員が退官後に各国の大使に任命される例も多い。外務省職員にとって大使ポストは出世のキャリアに組み込まれているが、とりわけ外務省においては事務次官をつとめた後、英米といった重要国の大使に転出する慣例が続いてきた。この点は、事務次官が最高ポストである他省庁とことなる特徴である。他方、相対的に日本との関係で重要性が低いと見られる国の大使には、しばしば本省の課長相当職すら経験していない人物が赴任するケースがあったため、外務省改革の一環としてその運用が見直された。一方アメリカなどでは大使は政治任用ポストとされ、政治家や時には与党の有力支持者である実業家、学者などが任命される。
なお、一連の外務省改革では大使のポストに民間の人材が多く登用された。例として、猪口邦子・国連軍縮会議代表部大使(前職は上智大学教授)、石弘之・ザンビア大使(東京大学教授)、小川元・チリ大使(元衆議院議員)、北岡伸一・国際連合代表部次席大使(東京大学教授)、浅井和子・ガーナ大使(弁護士)などである。
また、元々ヨーロッパにおける外交は貴族の手によりなされていたので、近代官僚制の時代になっても長くその風習は残り、大使を筆頭とする外交官には貴族的な高い教養が求められた。そのため社会主義政党による政権があえて貴族を大使に任命するという事例もあった。現代でもプロトコールに外交儀礼の伝統がとどめられており、フランス語が多用されている。
[編集] その他
[編集] 特命全権大使ではない大使
[編集] 特命全権大使が待命になった場合
[編集] 大使に準じる外交職員
[編集] 「大使」という名称であるものの正規の外務職員でないもの
[編集] 関連項目
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