特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
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通称・略称 | 外来生物法 |
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法令番号 | 平成16年法律第78号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 環境法 |
主な内容 | 外来生物の輸入規制など |
関連法令 | 動物愛護法、鳥獣保護法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(とくていがいらいせいぶつによるせいたいけいとうにかかるひがいのぼうしにかんするほうりつ、平成16年(2004年)6月2日法律第78号)とは、外来生物の規制および防除に関する日本の法律である。外来生物法、特定外来生物被害防止法と通称される。
日本在来の生物を捕食したり、これらと競合したりして、生態系を損ねたり、人の生命・身体、農林水産業に被害を与えたりする、あるいはそうするおそれのある外来生物による被害を防止するために、それらを「特定外来生物」等として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入等について規制を行うとともに、必要に応じて国や自治体が野外等の外来生物の防除を行うことを定める。
目次 |
[編集] 経緯
- 2003年 12月、中央環境審議会より「移入種対策に関する措置の在り方について(答申)」提出
- 2004年 環境省が国会に法律案を提出(3月9日)/ 可決成立(5月27日)/ 公布(6月2日)
- 2005年 特定外来生物に指定する第1次の候補リストを発表(1月31日)/ 施行(6月1日)/ 特定外来生物の第2次指定リストを発表(12月14日)
- 2006年 第2次分を施行(2月1日)、第3次指定に関する閣議(7月18日)、第3次指定リスト施行(9月1日)
[編集] 特定外来生物
この法律では、生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼしたり及ぼすおそれのある外来生物(侵略的外来種)の中から、規制・防除の対象とするものを、「特定外来生物」として指定する。その指定は、学者などの意見を聞いた上で、主務大臣である環境大臣によって行われ、政令(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令)に定められる。 特定外来生物は、生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれる。
特定外来生物とは別に、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼす疑いがあるか、実態がよくわかっていない海外起源の外来生物は「未判定外来生物」に指定される。輸入する場合は、事前に主務大臣に対して届け出る必要がある。
外国から生物を輸入する場合、税関でその生物が特定外来生物または未判定外来生物かどうかをチェックすることになるが、特定外来生物等と外見がよく似ていて、すぐに判別することが困難な生物がある。これらは「種類名証明書の添付が必要な生物」といい、外国の政府機関等が発行したその生物の種類名が記載されている証明書を輸入の際に添付しなければ輸入できない。また、税関もすべての規制生物を把握しておらず、規制されてる生物が難なく輸入されてしまうこともある。
[編集] 指定第一次指定種
2005年1月31日、環境省は特定外来生物に指定する第一陣の候補リストを発表した。6分類群の32種と1科4属、合わせて37の動植物がリスト入りした。
このリストは発表日の特定外来生物等専門家会合で承認され、その後、一般から意見を聴くパブリックコメントを経て再度専門家会合を開き、5月中には閣議決定され、2005年6月1日付でこれらが正式に指定された。
- 哺乳類(11種) タイワンザル、カニクイザル、アカゲザル、アライグマ、カニクイアライグマ、ジャワマングース、クリハラリス(タイワンリスを含む)、トウブハイイロリス、ヌートリア、フクロギツネ、キョン
- 鳥類(4種) ガビチョウ、カオグロガビチョウ、カオジロガビチョウ、ソウシチョウ
- 爬虫類(6種) カミツキガメ、グリーンアノール、ブラウンアノール、ミナミオオガシラ、タイワンスジオ、タイワンハブ
- 両生類(1種) オオヒキガエル
- 魚類(4種) オオクチバス、コクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフィッシュ
- 昆虫類(3種) ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリ
- 無脊椎動物(1科4属) ゴケグモ属の4種、イトグモ属の3種、ジョウゴグモ科の2属全種、キョクトウサソリ科全種
- 植物(3種) ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサ、ミズヒマワリ
オオクチバス(いわゆるブラックバス)は、釣り業界や愛好者の反対もあって、分類別の専門家会合で候補リストから外され、一旦は「半年をめどに検討する」ことが決定した。その後、環境相が「指定回避は先送りと批判されても仕方ない」として担当部局に再検討を指示した結果、一転、盛り込まれることになった。
このリストには、随時追加が可能であり、指定対象は今後も増やされる見通しである。外来クワガタやミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)、チュウゴクモクズガニ(上海ガニ)などは、生態系への影響が指摘されているが規制が難しいなどとして候補リストから外され、要注意外来生物として公表された。これらについては、引き続き指定が検討される。このミシシッピアカミミガメにおいては、北海道でも生息が確認されており、今からの完全駆除は不可能。
温室トマトの授粉など、農業用に使われるセイヨウオオマルハナバチもリストから外れたが、1年後の指定を目指して、議論が続けられる。
[編集] 指定第二次指定種
上記の第一次指定種に加え、下記の種が第二次指定種として追加指定された。施行は2006年2月1日より。
- 哺乳類 ハリネズミ属、アメリカミンク、シカ亜科(アキシスジカ属、シカ属、ダマジカ属、 シフゾウ)、キタリス、タイリクモモンガ、マスクラット
- 両生類(4種) コキーコヤスガエル、キューバズツキガエル、ウシガエル、シロアゴガエル
- 魚類 ノーザンパイク、マスキーパイク、カダヤシ、ケツギョ、コウライケツギョ、 ストライプトバス、ホワイトバス、パイクパーチ、ヨーロピアンパーチ
- 昆虫類(1属、1種) テナガコガネ属、コカミアリ
- 無脊椎動物(4属、6種) モクズガニ属(上海ガニ)、ザリガニ類1属と2種(アスタクス属、ウチダザリガニ、ラスティークレイフィッシュ、ケラクス属)、ヤマヒタチオビ、カワヒバリガイ属、カワホトトギスガイ、クワッガガイ、 ニューギニアヤリガタリクウズムシ
- 植物(9種) アゾルラ・クリスタタ(アカウキクサの一種)、オオフサモ(パロットフェザー)、 アレチウリ、オオキンケイギク、オオハンゴンソウ、ナルトサワギク、オオカワヂシャ、ボタンウキクサ(ウォーターレタス)、スパルティナ・アングリカ
[編集] 指定第三次指定種
2006年9月1日指定。
- 昆虫類(2属、1種) クモテナガコガネ属、ヒメテナガコガネ属、セイヨウオオマルハナバチ
[編集] 罰則
違反した場合、個人には3年以下の懲役や300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科される。
[編集] 動物愛護法、鳥獣保護法との関係
譲渡や遺棄が禁止されているため、ペットとして飼えなくなった場合、事実上殺す以外処分の方法がないことになるが、これに対し、動物愛護団体から異議が申し立てられている。
外来生物法においては、野生の特定外来生物の防除は、特定外来生物の種類、防除の区域及び期間、防除(捕獲、採取又は殺処分)の方法などの事項を公表して指定し、防除の実施は、国もしくは自治体、または環境大臣の認定を受けたNPO等の団体が、行うものとされている。外来生物法に基づく防除については、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)の規定は適用されない。
なお、特定外来生物が動物である場合には、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)により、殺処分はできる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならないとされている。
その他、動物愛護法に関する事項の詳細は、動物の愛護及び管理に関する法律を参照のこと。