赤燐発煙弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
赤燐発煙弾(せきりんはつえんだん)とは砲弾の一種で、填実された赤リンが燃焼することで生ずる煙幕の生成を目的としたもの。赤リンの英名 Red Phosphorus に由来してRP発煙弾と呼ばれることもある。
[編集] 構造
外見は通常の砲弾とほぼ同じであるか僅かに長い弾種もある。弾殻と弾底部が別の部品となっており、一方がもう一方に圧入されるか接合されて一発の弾丸を形成する。信管は弾頭か弾底に設けられる。内部構造は、「赤リン」を、燃料速度の速い火薬からなる「火管」が貫通し、反応生成ガス量の多い火薬からなる「放出薬」が弾頭部か弾底部に搭載される。赤リンは、数個のカートリッジに分割されて収納されていることもある。
信管が作動すると、火管が燃焼を始め、赤リンに引火する。続いて放出薬に着火し、大量のガスを発生する。放出薬から発生したガスで砲弾内の圧力が一定以上になると、弾丸は弾殻と弾底部に分裂しながら赤リンを放出する。
開放された赤リンは、燃焼して五酸化二リンを生ずる。五酸化二リンは、大気中の水蒸気を吸着し白色の煙霧を生成し、可視光を遮断する。
[編集] 安全性と規制
赤リンは、消防法で第2類危険物に指定されている可燃性固体である。自然発火性、および人体に対する毒性はない。発火点は260℃で、火災となっても注水消火が可能な物質である。
燃焼で生ずる五酸化二リンは有毒であるが、通常の目的で使用される赤燐発煙弾から発生する濃度では人体に影響を与えるレベルにならない。自然界に放出された五酸化二リンは、水分と反応しメタリン酸またはオルトリン酸に変化する。赤燐発煙弾は化学兵器禁止条約で規制されていない。
赤燐発煙弾は炸薬を内蔵しないので、爆発しても破片を飛散させることがない。 不発弾の発生率は黄燐発煙弾より多いが、炸裂しない構造であるため処理作業時の安全性は高い。