1973年のピンボール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『1973年のピンボール』 (せんきゅうひゃくななじゅうさんねんのぴんぼーる) は、村上春樹の第二作。デビュー作『風の歌を聴け』から9ヵ月後、文芸誌『群像』1980年3月号に発表。同年6月に単行本化された。「僕と鼠もの」シリーズの第二作。『pinball,1973』のタイトルで英訳版も発行されている。
大江健三郎の『万延元年のフットボール』のパロディでもある。
1973年9月に始まり、11月に終わる、「僕」の話であるとともに鼠の話で、ピンボールについての小説という形をとる。第1章から第25章まで、「僕」の物語の章と鼠の物語の章に分かれ、二つの物語系列がパラレルに進行していく。村上春樹は当初、小説をリアリズムで書こうとしたが挫折し、鼠の章のみリアリズムで書いたと述べている。
目次 |
[編集] 話の概要
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 「僕」の物語
冒頭、1969年の大学生活が回想され、死んだ恋人の直子について語られる。そして1973年、大学を卒業し翻訳で生計を立てている「僕」は、いつのまにか部屋に住みついた双子の女の子と共同生活をしている。「僕」のアパートの部屋の電話の配電盤が新しいものと取り替えられるが、電話局の男は旧式の配電盤を部屋に忘れていった。「僕」と双子は旧式の配電盤を山中の貯水池に沈め、お葬式をする。ある日、「僕」の心をピンボールが捉え、1970年ジェイズ・バーで鼠が夢中になり、その後「僕」も夢中になった、スリーフリッパーのピンボール台「スペースシップ」を捜し始める。ピンボール・マニアのスペイン語の講師と出会った「僕」は、彼に連れられピンボールのコレクターの倉庫で「スペースシップ」と再会を果たす。しかし「僕」はゲームをしないで「スペースシップ」と言葉を交わしただけで倉庫を出ていく。そして悩まされていたものから解放された「僕」の部屋から双子の女の子が去る。
[編集] 鼠の物語
鼠は1970年に大学を辞めて以来、故郷の街のジェイズ・バーに通ってバーテンのジェイを相手に現実感のない日々を送っている。1973年9月不要物売買コーナーを通して女と知り合い交際するが、その交際にも苦しむ。やがて自分から女に会うのはやめ、ジェイに別れを告げて街を出る。
[編集] 登場人物
- 僕
作中の書き手。友人と翻訳専門の事務所を設立し、英語の翻訳をしている。郊外のアパートに住んでいる。
- 双子の女の子
トレーナー・シャツの胸にある208と209のプリントでしか見分けがつかない。この作品で初登場し、以後の作品でしばしば登場する。
- 友人
「僕」と翻訳専門の事務所を設立し、フランス語の翻訳をしている。
- 事務員の女の子
ビートルズ『ペニー・レイン』をサビ抜きで1日に20回も口ずさむ。
1970年に大学を辞めて以来、現実感を喪失している。
ジェイズ・バーのバーテンダー。中国人。片手の猫と暮らしている。
- 鼠の女
突堤の近くのアパートに住む。美術大学の建築学科を卒業し、設計事務所に勤めている。
- 土星生まれの男
大学の一部を占拠する政治的なグループに所属。
- 金星生まれの男
- 直子
1969年に「僕」とつきあっていたが死亡している。
- 井戸掘り職人
井戸掘りの天才。直子が17歳の秋に死亡。
- 直子の父
仏文学者。大学の職を辞してからは古い書物の翻訳をしていた。
- 髪の長い少女
「僕」大学生の時に同じアパートに住んでいた。1970年3月大学をやめ故郷に帰る。
- ピンボール会社の集金人兼修理人
村上春樹 | |
---|---|
作品 | |
長編小説 : | 風の歌を聴け | 1973年のピンボール | 羊をめぐる冒険 | 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド | ノルウェイの森 | ダンス・ダンス・ダンス | 国境の南、太陽の西 | ねじまき鳥クロニクル | スプートニクの恋人 | 海辺のカフカ | アフターダーク |
短編小説 : | パン屋再襲撃 | ファミリー・アフェア | TVピープル | トニー滝谷 | 東京奇譚集 |
随筆 : | 意味がなければスイングはない | 遠い太鼓 |
ノンフィクション : | アンダーグラウンド | 約束された場所で |
翻訳 : | キャッチャー・イン・ザ・ライ | グレート・ギャツビー | ロング・グッドバイ |
関連 | |
カテゴリ : | 村上春樹 | 小説 |