BT戦車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
BT戦車(べーてーせんしゃ;ロシア語:Быстрый танкブィーストルィイ・ターンク、略称:БТベーテー)は、第二次世界大戦前にソ連が開発した一連の軽戦車である。「BT」とはロシア語で「素早い戦車」を意味する「Быстрый танк」の頭文字をとったもので、「快速戦車」などと訳される。「BT戦車」とすると「快速戦車戦車」ということになってしまうので、本来はおかしい。BT-2、BT-5、BT-7の3タイプが実用化された。開発は、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国のハリコフで行われた。
目次 |
[編集] BTの生みの親、クリスティー
BT戦車はアメリカ人ジョン・W・クリスティーが開発したM1940という戦車に由来する。これはM1928またはM1931の砲塔の無いデモンストレーション用で、1930年代初めの開発にもかかわらず、先進性を主張した形式番号であった。(M1930と呼ぶ資料もあるなど、名称に諸説あり)クリスティーはアメリカで様々な戦車を開発していたが、彼の独創的なアイデアと開発におけるいかにも発明家らしい性格のため、本国では採用されることはなかったが、イギリス、ソ連では彼のアイデアを受け継ぐ戦車が開発された。
M1928から採用された「クリスティー式懸架装置」は、大直径転輪と、ストロークの大きいコイルスプリングによるサスペンションの組み合わせで、これに航空機用の大馬力エンジンを用いることで高速走行を実現していた。装甲自体は薄かったが、代わりに車体前面は傾斜し、避弾経始(装甲を斜めにする事で当たった弾丸を後ろにそらす)を取り入れていた。また、一番の特徴は履帯なしでも走行できることであった。が、実際は履帯の取り外しと再装着に時間がかかるため、この機能が使われることはあまり無かった。
[編集] M1940からBTへ
新たな戦車ドクトリンに基づいて高速戦車を求めていたソ連軍は、クリスティー戦車に目をつけた。二輌輸入したM1940を使って1931年3月から試験開始、その結果をもとに各部を強化するなどして、最初の量産型BT-2を採用した。改良ポイントとしては砲塔の新設、車体前部形状の変更、操縦士ハッチの変更、アルミ合金製の転輪をスポーク型の鋳造製、また後にプレス鋼板製に変更、途中から前部フェンダーの増設などである。BT-2の成功に気を良くしたソ連陸軍はその後改良型BT-5、BT-7を生産した。総生産台数は7000両を上回る。
[編集] 実戦での活躍
BT戦車はスペイン内戦、ノモンハン事件、ポーランド侵攻、冬戦争(第1次ソ連=フィンランド戦争)などで使われた。高い機動力と(その当時としては)強力な備砲はソ連戦車の特徴とも言え、各戦域で活躍したが、損害も少なくなかった。独ソ戦の初期にも参加したが、消耗しT-34に取って代わられた。
[編集] BT戦車の内分け
- BT-2
- 最初の量産型。武装は円形砲塔にB-3(5K)・37mm砲、後からその右に7.62mmDT機関銃のポールマウント式銃架を備えたタイプが制式であるが、十分生産されないうちに45mm戦車砲の生産に移行し37mmの生産が打ち切られ、砲を搭載できたのは180輌に過ぎなかった。やむを得ず、残りの車輌は代わりにDA-2連装機関銃を搭載、こちらの方が440輌もある有様だった。同じクリスティー戦車の子孫であるイギリスの巡航戦車同様、アメリカのリバティーエンジンの国産版であるV型12気筒M-5を搭載しているが、最初の100輌には間に合わず輸入したリバティーを使っている。初期にはクリスティー同様の単純な排気口や箱型マフラー(消音機)だったが、大型の円筒形マフラーに変更され、さらに単純な長い筒型排気管に改修されたものもある。エンジングリルの排気口は二枚の板が斜めに傾く単純な物で、当初クリスティー戦車同様にむき出しであったが、まもなく異物混入防止用の金網製カバーが装着された。これらは基本的にT-34まで同じような構造である。
- BT-5
- 装甲材質を向上させ、また主砲を37mm砲の拡大版である45mm20k戦車砲に強化。砲塔は当初円形で後部に箱型バスル(雑具箱ではなく砲塔の一部)の付いた形状であったが、標準型ではバスル部が大型化され側面装甲と一体につながった、T-26軽戦車と同型の物になった。一部は夜戦用に防盾上にサーチライトを二基装備している。指揮戦車型BT-5TUには無線機が搭載され、砲塔上のハチマキ状フレームアンテナで識別できる。
- T-26と共にスペイン内戦や冬戦争に実戦参加、ノモンハン事件での主力であるが、ガソリンを詰めた瓶(火炎瓶ですらない)をぶつけると、加熱した後部の大型マフラーに流れたガソリンがかかり自然発火、炎上して撃破されるためマフラーは撤去され、排気管は延長された単純な筒型に変更された。なお、BT-2同様のエンジングリルの排気口上の金網は異物混入防止用としてノモンハン事件以前(試作車の段階)に標準装備されており、別に火炎瓶攻撃に急遽対応して設置されたわけではないのだが、未だに誤解した記述の資料が大半である。(おそらく、戦った日本側が対火炎瓶用と勝手に解釈したものと思われる。)事実、同じくノモンハンで戦ったT-26には、スペイン市民戦争での戦訓からある程度の対策が既にとられていたにもかかわらず火炎瓶で容易に撃破されており、しかし金網の追加などの対策は全くとられず、後の冬戦争ではフィンランド軍により火炎瓶攻撃を受けて同じように撃破されている。
- BT-7
- 外見は前者とあまり変わらないが新たに溶接構造を取り入れており、燃料タンクが増設され車体を若干拡大、装甲も強化された。砲塔はBT-5同様の従来型と'37年からの側面装甲が傾斜した円錐型があり、'38年後期型砲塔の後部にはピストルポートに代わってDT機関銃が装備され、'39年型砲塔からは装填手ハッチに対空機関銃架が装着された。この砲塔には途中から新たに45mm戦車砲1938年型が搭載されている。エンジンは新型の450馬力M-17T(ドイツの航空機用BMWエンジンの戦車用改造版・T-28やT-35でも同系列のものを採用)が搭載され、また後にT-34に使われるV2ディーゼルエンジンに変更したBT-7M(後にBT-8)が'38年に試作され、'39年から'41年にかけて生産された。なおディーゼルエンジン搭載車はエンジングリル点検ハッチ中央にベンチレーターカバーの丸い膨らみがある(従来の型はずっと大型の円盤型)のと、工具類の配置により外見で識別できる。
- 履帯はBT-5までの物よりピッチ幅の小さい新型となったが、旧型を履いたものや、逆に新型を履いたBT-5も見られる。BT-2、5と共に独ソ戦初期に装甲の弱さゆえに多数が撃破され、T-34に更新されてからは極東方面など第二線に退き、満州侵攻の際はヨーロッパ方面からのT-34の到着が遅れたため、久々に実戦参加している。生産数については諸説あるが、合計4600輌以上、うちディーゼルエンジン搭載型は706輌と少ない。
- なお時期的にディーゼルエンジン搭載型が主力となるほどの数が無いはずのノモンハン事件の後半に、大量投入され火炎瓶が無効になったとする記事が大変多いが、ソ連公式戦記お得意の捏造か、さもなくば日本側の勘違いと思われ、一部が投入されていたとしても、全体の主力は相変わらずBT-5や従来型のBT-7(新型砲塔含む)だったと思われる。またガソリンエンジン型は火炎瓶だけでなく、機関部付近への榴弾の直撃でも爆発・炎上の危険があった。この点は当時のソ連軽戦車共通の弱点であった。
第二次世界大戦のソ連の装甲戦闘車両 | |||
---|---|---|---|
軽戦車 | 快速戦車 | ||
T-26 | T-50 | T-60 | T-70 | T-80 | BT-5 | BT-7 | BT-8 | ||
豆戦車 | 装甲牽引車 | ||
T-27 | T-26T | T-20コムソモーレツ | ||
水陸両用戦車 | 中戦車 | ||
T-37 | T-38 | T-40 | T-28 | T-34 | T-44 | ||
重戦車 | |||
T-32 | T-100 | T-35 | SMK | KV-1 | KV-2 | KV-85 | IS-1 | IS-2 | IS-3 | |||
自走砲 | |||
ZiS-30 | SU-5 | SU-76 | SU-76i | SU-122 | SU-85 | SU-100 | SU-152 | ISU-122 | ISU-152 | |||
装甲車 | |||
BA-11 | BA-20 | BA-21 | BA-27 | BA-64 | BA-30 | |||
自走式対空砲 | |||
ZSU-37 | |||
戦車一覧 |
ウクライナの装甲戦闘車両 | |||||
---|---|---|---|---|---|
軽戦車・快速戦車 | 重戦車 | 火炎放射戦車 | |||
BT-2 | BT-5 | BT-7 | A-20 | T-35 | OT-54 | OT-55 | 計画483 | |||
中戦車・主力戦車 | |||||
T-12 | T-24 | T-32 | T-34 | T-34M | T-44 | T-34-85 | T-43 | 製品416 | T-44 | T-54 | T-55 | 製品430 | T-64 | T-64A | T-64B | T-64BV | 計画476 | T-80UD | T-84 | オプロート | ヤタハーン |
|||||
近代化改修型戦車 | |||||
T-54 | T-55 | T-55AGM | T-59 | T-62 | T-72MP | T-72AG | T-72-120 | T-64U | ブラート | M60A3-84 | |||||
装甲車 | 自走砲 | 自走式対空砲 | |||
オーストィン・プトィーロヴェツィ | オーストィン・ケフレース | 2S1グヴォズジーカ | MOP-4K | ZSU-23-4/4M4シルカ | ドネーツィ | |||
歩兵戦闘車 | 装甲兵員輸送車 | ||||
BMP-1Uシュクヴァール | BMT-72 | BTMP-84 | BTR-50PK | BTR-60PB/M | BTR-70DI | BTR-80-UM | BTR-94 | BTR-3Uガルジアン | BTR-4 | MT-LB | BRDM-2 | BRDM-2DI | DOZOR-B | M113 |
||||
装甲回収車 | 装甲救護車 | 装甲牽引車 | |||
BREM-2 | BREM-4K | BREM-64 | BREM-84 | MTOR-84 | M48 | BTR-70BMM | BSEM-4K | ヴォロシーロヴェツ | AT-T | MT-Tエネーイ | |||
装甲列車 | |||||
チョルノモーレツィ | ナ・ウクライィーヌ | ポームスタ | プラヴォベレージュヌィイ | スーフ | クリーシュチュ | ヴォーリャ | ボフネツィ | リュースャ | ゾロチーウスィカ | ハルィチナー | ウクライィーナ スィチョヴィーイ・ストリレーツィ | ヴィーリナ・ウクライィーナ | ホールトィツャ | チェルヴォーナ・カルィーナ | スィチョヴィーク | カルメリューク | ザポロージェツィ |
|||||
戦車一覧 |
この「BT戦車」は、武器・兵器に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(軍事ポータル|軍事PJ|航空PJ) |
カテゴリ: 武器・兵器関連のスタブ | ソ連の戦車 | ウクライナの戦車