うわん
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[編集] 性格・特徴
古い屋敷に入ると、誰もいないのに「うわん!」と大きな声が響き渡る。しかし屋敷の外にいる者には何も聞こえない。うわんと言う名称はここに由来する。うわんは大声を上げるだけで、人間に危害を加える事は無い。
[編集] 出典
江戸時代の画家鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にうわんの姿が描かれているが、古屋敷か古寺と思われる塀の上から大入道のような上半身を水平に出して大声を発している様子である。また、山田野理夫『東北怪談の旅』に、江戸時代末の事として概略次のような話が収録されている。
嘉助という男が金をため、古い屋敷を買って女房と一緒に移り住んだが、その夜、家中に「うわん!」と言う大声が響いて一睡もできなかった。翌朝、赤い目をして出てきた二人は、うわんと言う声で眠れなかったと訴えたが、近所の者たちは誰一人そんな声は聞かず、嘉助は一晩中女房と抱き合っていたので眠れなかったのでは、と噂した。しかしその話を聞いた古老は、古屋敷には「うわん」という化け物が住んでいるのだと言った。
[編集] 由来
もともと妖怪には、抽象的な存在として姿かたちの無かったものも多く、うわんのように声や音、或いは光や自然現象も妖怪として認識される事があった。それが、文化の爛熟した江戸時代になると庶民の間に一種の妖怪ブームが起こり、抽象的であった妖怪の具象化を求める意識が起こり、鳥山石燕や竹原春泉その他の絵師たちがその需要に応じて妖怪の姿を創作した。上記『画図百鬼夜行』に描かれたうわんも、本来は声だけの怪異として東北地方に伝わっていたものであろう。
[編集] その他の説
古びた寺の近くに現れるとされ、人が通りがかるとその名の通り「うわん」と奇声を出して驚かせ、人が気を抜いた時に命を奪い取ってしまう。言われた側が同じように言い返す事が出来ればうわんは逃げ去ってしまうともいわれる。
ただし、これは佐藤有文による創作である可能性があり、実際は絵だけが伝わっている妖怪でそのような伝承は存在しないとも考えられている。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
山田野理夫 「東北怪談の旅」 自由国民社 1974年