アムリウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アムリウス (Amulius) はローマの建国神話に登場するアルバ・ロンガの王。生まれたばかりのロムルスとレムスを川に流すように命じた。
伝承によれば13代目のアルバ・ロンガの王プロカの息子でヌミトルの弟。ヌミトルはローマの建国者ロムルスの祖父であり、アムリウスはロムルスの大叔父にあたる。娘にアントがいる。
アムリウスは父から財宝と領土を受け継ぎ、兄ヌミトルは王位を継承した。しかしアムリウスは自らが受け継いだ財を背景に力でもって兄から王位を簒奪し、不当にも自らがアルバ・ロンガの王となった。アムリウスはヌミトルを隠棲に追いやり、将来自らの王位を脅かしかねない正当な王位の継承者であるヌミトルの男子は狩猟の最中に殺害した。さらにヌミトルの娘であるレア・シルウィアを強制的にウェスタの巫女とすることで、新たに正当な王位の継承権を持つヌミトルの子孫が生まれることを防止した。ウェスタの巫女となった女性には処女が義務付けられ、子を作ることは許されていなかった。
しかしそれからしばらくするとレア・シルウィアは懐妊する。交わった相手はマルスとする伝承が最もよく知られているが、アムリウス自身がシルウィアと交わったとする説もある。
懐妊を知ったアムリウスはシルウィアを幽閉し、監視をつけた。その後レア・シルウィアが双子を出産するとこの赤子たちをティベリス川に流すよう配下に命じた。
こうしてアムリウスは赤子の殺害を果たしたはずであったが、双子は流されることなく岸に漂着し雌狼の乳を飲み生存していた。アムリウスの牧夫ファウストゥルスに拾われた双子はロムルスとレムスと名付けられ、王の知らぬまま立派な若者に成長していった。
ロムルス、レムスらとヌミトルの羊飼い達との間で諍いの生じた結果、レムスはヌミトルの元に連れ去られ、そこで祖父と孫とは真実を知る。同じ頃ロムルスも養い親から誕生を聞かされ、自身がヌミトルの孫であることを知る。ファウストゥルスはレムスにも同じことを伝えようとしてアルバへ向かうが、怪しまれアムリウスの元へ連れ出される。そしてついにアムリウスもヌミトルの孫が生きていたことを知る。
アムリウスはヌミトルを召還しようと使者を派遣する。しかしこれをきっかけにヌミトルらは蜂起し、アルバのうちからはレムスが、外からはロムルスが攻め立て、アムリウスは討たれた。
アムリウスの後のアルバ王にはヌミトルが即位した。