カルボン酸ハロゲン化物
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カルボン酸ハロゲン化物(-さん-かぶつ、carboxylic halide)は有機化合物の分類のひとつで、カルボン酸の酸ハロゲン化物 (R−COX, X = F, Cl, Br, I) を指す。カルボン酸ハライド、アシルハライド (acyl halide) とも言う。種々のカルボン酸誘導体を合成する際の中間体として用いる。ハロゲンの種類により、カルボン酸フッ化物、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物に分けられる。
[編集] 命名法
塩化物を命名する場合、母体となるカルボン酸名の語尾 "—oic acid"、"—ic acid"、または "—carboxylic acid" を、それぞれ "—oyl chloride"、"—yl chloride"、または "—carbonyl chloride" に置き換える。フッ化物 "fluoride"、臭化物 "bromide"、ヨウ化物 "iodide" も同様である。日本語では「○○化」を前に置き、その後に "—yl" の部分を字訳する。
(例)CH3CO2H(酢酸、acetic acid) → CH3COCl(塩化アセチル、acetyl chloride)
[編集] 合成法
カルボン酸塩化物を合成する場合は一般に、母体となるカルボン酸に対して、塩化チオニルやリン酸トリクロリドなどを反応させる。減圧蒸留により過剰分を除去可能な塩化チオニルが第一選択となる。他に、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化オキザリルなども用いられる。
リン酸トリクロリドや五塩化リンなどのリン化合物を用いると、生成するリン酸成分の除去が困難となる場合もある。またリン酸トリクロリドや五塩化リンは法規制のため入手しにくいという問題もある。
カルボン酸ブロミドは三臭化リンなどを用いて合成する。
[編集] 反応
塩基存在下、種々の求核剤と反応させるとカルボン酸誘導体となる。
など、上記各項目の合成法の節も併せて参照のこと。
- R-C(=O)-Cl + R'2CuLi → R-C(=O)-R'
- 水と反応すると、母体となったカルボン酸とハロゲン化水素へと加水分解される。
- ルイス酸の作用により、芳香族化合物に対し求電子的置換反応を行う。(フリーデル・クラフツ反応)
- ArH + R-C(=O)-Cl + AlCl3 → Ar-C(=O)-R•AlCl3
ほか、ローゼムント還元により、アルデヒドの原料となる。アーント・アイシュタート合成により、メチレン基が1個増えたカルボン酸に変換される。