キ83 (航空機)
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キ83は第二次世界大戦中に試作された日本陸軍の戦闘機である。開発・製造は三菱。第二次世界大戦中に日本で開発された戦闘機の中で最高速をマークしたが、開発・製造の遅れにより実用化前に終戦を迎えた。
[編集] 概要
昭和16年に日本陸軍が、爆撃機の援護を目的とした長距離戦闘機の開発を三菱に指示した。これが、キ83である。キ83に対しては、航続距離や武装の他高高度性能も要求された。加えて、途中から海軍との共同開発機となったため海軍側の要求も取り入れなければならず、陸軍からは、司令部偵察機や爆撃機としても転用できる汎用性が追加で求められたため設計方針が固まらなかった。このため、試作第1号機の完成は昭和19年10月になってしまった。
昭和19年11月より試験が開始された。安定性や操縦性は優れ、高速性能も良好だった。速度については予定値だった704km/hはマークできなかったが、それでも高度8000mで686.2km/hを記録した。また、日本で開発された機体にしては珍しく、排気タービンによるエンジントラブルに悩まされる事が少なかったと伝えられている。ただし、エンジンの振動が気になることと、尾部がやはり振動して安定を損なう傾向があることが指摘された。尾部の振動については、取り敢えず水平尾翼に支柱を付けることで対応し、増加試作機において抜本的な改良を行うことにした。
続いて昭和20年には2号機から4号機が完成したが、2号機は3月にテスト飛行時に墜落しテストパイロットが殉職する事故を起こして失われた。また、3号機と4号機は6月に各務ヶ原飛行場の空襲によって破壊、消失した。終戦時には、松本飛行場に疎開し試験を続けていた1号機のみが残った。1号機は、整備された上アメリカ軍に引き渡されアメリカ本土に輸送されたが、性能テストはされずそのままスクラップになってしまった。
[編集] スペック
- 全長:12.50m
- 全高:4.60m
- 全幅:15.50m
- 全備重量:8,795kg
- エンジン:ハ211-ル×2 出力 2,200hp
- 最大速度:704 km/h
- 実用上昇限度:12,650m
- 航続距離:2,219km
- 武装
- 20mm機関砲×2
- 30mm機関砲×2
- 爆弾50kg×2
- 乗員:2名
(データは計算値)