コスモポリタニズム
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コスモポリタニズム(cosmopolitanism)は全世界の人々を自分の同胞ととらえる思想。世界市民主義・世界主義とも呼ばれる。コスモポリタニズムに賛同する人々をコスモポリタンと呼ぶ。
古代ギリシャのディオゲネスが初めて唱えた。その背景にはポリスの衰退により「ポリス中心主義」が廃れたこととアレクサンドロス大王の世界帝国構想があった。その後のストア哲学では禁欲とともにコスモポリタニズムを挙げて人間の理性に沿った生き方を説いた。 近代ではカントがコスモポリタニズム的な思想を打ち出した。さらにザメンホフによるエスペラント語の考案により、より充実したものとなった。
コスモポリタニズムの発展形態として世界国家構想が挙げられる。これは人種・言語の差を乗り越えた世界平和には全ての国家を統合した世界国家を建設すべきである、という考え方に立って主張されたもので、カントも主張していた。
その構想に沿って立ち上げられた組織がEUであるが、EUがヨーロッパ圏を越えて他地域まで拡張するかどうかは未知数である。さし当たってトルコの加盟が一つの試金石になるだろう。もう一つの著名な準世界国家はアメリカであり、事実上世界政治に最も実行力を持つ政府である。しかしアメリカはモンロー主義に代表される内向き志向も強い。
世界国家に反する動きとしては民族主義、国家主義が挙げられるが、これらも世界国家を目指す動きではある。ただその統合のやり方が「世界の人々を同胞として捉える」のではなく、自民族が絶対的優位に立つ統合であるため、通常コスモポリタリズムとは呼ばない。
しばしば誤解されるが、アナキズムと同一ではない。アナキズムは完全に国家を否定し、人類の共同社会を建設する考え方であるが、コスモポリタニズムは国家そのもの否定しているわけではないからである。