スタグフレーション
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スタグフレーション(stagflation)は、経済現象の一つ。 stagnation(停滞)、inflation(インフレーション)の合成語で、 経済活動の停滞(不況)と物価の持続的な上昇が共存する状態を指す。 失業が悪化するとともにインフレが進行するため、 デフレーションと比べると、貨幣や預貯金の価値が低下する分だけ生活が更に苦しくなる。
スタグフレーションの主たる原因は、供給ショックである。 原油価格の高騰などにより、従来の生産設備や生産工程に行き詰まりが発生し、供給能力が低下することを指す。 1973~74年の第1次オイルショック、1979年の第2次オイルショックでは、多くの先進国がスタグフレーションに悩まされることになった。
その後は、生産設備や生産工程の見直しにより、スタグフレーションから脱却することに成功している。省エネルギー運動もその一環である。
2006年現在、欧米社会において原油価格高騰を背景としたスタグフレーションの懸念が強まっている。
[編集] 発生のプロセス
経済のダイナミズムから見れば、スタグフレーションは、経済上の資源を過剰に使用して経済成長した場合に、バランスをとるために発生する。
- 何らかの外的ショックによりコストが増大する。
- 利益を圧迫された企業は生産調整を図る。
- 需要が旧来のトレンドを描く中で、供給が減少するため物価上昇が加速する。
- 物価上昇が加速することで需要量が減少し供給とマッチする。
通常の景況悪化と違い、需要よりも先に供給が減少することが、特徴である。 そのため、通常の景況悪化=「物価下落と不況」ではなく、スタグフレーション=「物価上昇と不況」ということになる。どちらにしても、需給がバランスへむかうプロセスであることは変わらない。
また、スタグフレーションが発生するとフィリップス曲線は右上がりとなる。
[編集] 歴史
70年代の石油価格高騰では、工業生産の停滞が起き石油の需要にはブレーキがかかったが、労働需要にもブレーキがかかり過剰雇用→失業増大を招いた。 70年代末、多くの先進諸国が第二次オイルショックでスタグフレーションに陥る中、日本はほとんど影響を受けず80年代の好景気へ入っていく。
これは、産業の合理化、円高ドル安進行による実質石油価格の抑制、第一次オイルショックでの過剰な調整による余力が原因と見られる。 また、1980年代は逆に石油価格が下落し、「物価安定と好景気」が先進国を活気付けた。