スプロール現象
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スプロール現象(sprawl-げんしょう)は都市郊外部のスプロール化(urban sprawl)を指し、都市が無秩序に拡大してゆく現象を指す。スプロールとはむやみに広がるといった意味。
[編集] 問題点
都市が発展拡大する場合、郊外に向かって市街地が拡大するが、この際に無秩序な開発が行われることをスプロール化と呼ぶ。計画的な街路が形成されず、虫食い状態に宅地化が進む様子を指す。
通常、都市郊外の小規模な農地などが個別に民間開発される場合、土地利用の合理性や周囲の道路との接続はあまり意識されないまま、もっぱらその土地の形状に合わせて、住宅地などが整備される。
このため、開発区域内は整理されていても、開発区域同士の間に計画性がなくなることになる。また、郊外農地の地権はあぜ道などにより区画されていて整形されてない場合が多いため、それに併せて整形が不十分となる。
これにより、道路網が不十分なため自動車の渋滞を招いたり、住宅の密集による災害時の脆弱性などにつながり、都市機能が低下する。一度スプロール化した地域では、地権の細分化、地価の上昇などにより、改善は非常に困難になる。
[編集] 対策
いったんスプロール化が進展した後は、改善が困難になるため、対策はスプロール化の防止が主眼となる。
スプロール化防止に有効なのは、公的機関などによる大規模な区画整理である。区画整理を都市開発に先立って行うことで、敷地を整形にすることが可能になり、都市機能が向上する。しかし、区画整理にも地権者の合意が必要なため、中々事業が進まない事例も多く見受けられる。
都市を新設する際に、計画性を前面に押し出し碁盤の目のような街路などを形成する方法がある。東アジアの古代都市や、近代においてはアメリカ合衆国や北海道の都市などがそれにあたる。しかし、都市がその計画範囲を超える場合は、スプロール化する可能性がある。都市の地図などで、都心部が合理的な区画になっているのに対して郊外が無計画化しているものが見られるのは、このためである。例として、北米の都市は、近代的な都市計画に基づいて設計されたが、モータリゼーションの進展により都市範囲が飛躍的に拡大したことなどから郊外でスプロール化が散見されるようになった。
欧州各地に設置されたローマ都市では都市城壁が、都市の拡大そのものを抑制しており都市計画の合理性が保たれる結果となっている。これは、首都のローマ市が無計画に拡張した反省からであると考えられる。
一方こうして形成された住宅地は、計画性に乏しいが故に逆に土地区画、住宅の種類や形態、住宅の供給年代の多様性をもたらしている。このため住民の年齢構成の偏りや多様な所得階層の存在という特徴も有し、そのため計画的に形成されたニュータウンで指摘されるような人口減少や急速な若年層の減少、高齢化といった諸問題を緩和させているという側面も持っているといえる。