スポットネットワーク受電
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スポットネットワーク受電は特別高圧受電方式の一つ、主として人口100万人を超えるような大都市で使用されている。
特徴としては、供給信頼度がきわめて高い(停電する確率が低い)、停電・復電操作も自動化されており運用がしやすいといったメリットがある反面、設備建設費が高い、制御方式が複雑なため工事や修理、点検整備などには十分な知識と経験が必要であるといったデメリットもある。
[編集] 構成
電気事業者(電力会社)の変電所から取り出された、2回線~4回線(通常3回線が多い)の22kVないし33kV級配電線を分岐して、需要家へと引き込む。
各回線には、変圧器の励磁電流及び充電電流を開閉できる能力を有する断路器(LDS)又は遮断器が設けられ、その二次側にはネットワーク変圧器が設置される。
ネットワーク変圧器は、22kVないし33kVを三相三線式6.6kVないし3.3kVへ降圧するものと、三相四線式415/240V級へ降圧するものとに分かれる。前者の変圧器で構成される方式を、高圧スポットネットワーク方式と呼び、後者の変圧器で構成される方式を、低圧スポットネットワーク方式と呼ぶ。現在、大規模需要家は高圧スポットネットワーク方式、中規模需要家は低圧スポットネットワーク方式といちおう区別がなされているが、既存の設備では同規模の需要家でも、時代や使用方法などによりどちらが採用されているかはまちまちである。 ネットワーク変圧器の特徴として、1回線が停電した場合おいても他の変圧器で需要家の負荷全てをまかなえるよう設計されている。
ネットワーク変圧器の二次側には、短絡遮断用のプロテクタヒューズ(省略される場合もある)と、遮断・投入用のプロテクタ遮断器を設ける。プロテクタ遮断器は高圧スポットネットワーク方式においては、真空遮断器又はガス遮断器が、低圧スポットネットワーク方式においては、気中遮断器などが用いられる事が多い。
各プロテクタ遮断器の二次側は、同一の母線に接続される。これをネットワーク母線と呼ぶ。
ネットワーク母線から各負荷への供給用に分岐配線が行われ、高圧スポットネットワーク方式においては分岐配線にさらに遮断器が接続され、低圧スポットネットワーク方式においては分岐配線に配線用遮断器等が接続される。これをテイクオフ遮断器と呼ぶ。 テイクオフ遮断器の二次側には、高圧スポットネットワーク方式においては高圧からさらに低圧へと降圧するための変圧器が設けられ、分岐用の配線用遮断器等を介して使用されている。低圧スポットネットワーク方式においては、使用電圧が415/240Vであれば直接分岐用の配線用遮断器等を介して使用し、200V級ないし100V級であれば、高圧スポットネットワーク方式と同様に降圧用の変圧器を設け、分岐用の配線用遮断器等を介して使用される。
[編集] 制御方式
スポットネットワーク受電方式の制御は、複数の要素を持つネットワーク継電器が、プロテクタ遮断器を動作させる事により行われる。 無電圧投入、差電圧投入、逆電力遮断が主たる制御であるが、通常の受電方式に比べて制御方式はかなり複雑となる。 下記にそれぞれの動作を具体的に述べる。
無電圧投入 プロテクタ遮断器が開放状態であり、一次側が充電状態かつネットワーク母線が無電圧でさらに故障が発生していない場合、プロテクタ遮断器を自動投入する。 通常は設備が新設された場合や、工事・点検もしくは事故などにより停電したのち復電させる場合に起きる。
差電圧投入 あるプロテクタ遮断器が開放状態であり、一次側も二次側(ネットワーク母線)も充電状態で故障が発生しておらず、一次側の電圧が二次側と比較して高くさらに位相も進み状態にあるとき、プロテクタ遮断器は投入する。 通常は、工事・点検もしくは事故などにより1回線のみを停電し、復電(電気事業者側から再送電)させる場合に起こる。
逆電力遮断 プロテクタ遮断器が投入状態であったが、何らかの原因でプロテクタ遮断器一次側が停電した場合、他の回線から供給される電力が、ネットワーク母線を経由して逆に停電した回線へ送電してしまう。それを防止するため、継電器に方向性をもたせて逆電力を検出し、該当するプロテクタ遮断器を開放する。 通常は、工事・点検もしくは事故などにより、電気事業者側で回線を停電した場合に起こる。
この他に、過電流遮断要素(前述したプロテクタヒューズが省略される)、検圧要素などがネットワーク継電器に備わっているものもある。