セイモア・ダンカン
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セイモア・ダンカン(Seymour Duncan)は、ギター用ピックアップのメーカー。また、創業者の名前 (Seymour W. Duncan)。1978年にカリフォルニアのサンタバーバラにて創業。
[編集] 歴史
若かりし頃、幾つかのミュージックショップや、個人的にピックアップの作製や改造、修理を行っていた。セイモア・ダンカン社創業以前の一時期は、フェンダー社のサービスセンターに勤務し、その時代にジェフ・ベックが名作アルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』で使用したと言われるギブソン社製ハムバッキング・ピックアップが二基載せられた、改造テレキャスター通称テレギブを製作したとされる。この時乗せられた二基のハムバッキングは、ギブソン社製のPAFと呼ばれる貴重なピックアップをリビルド・リワイヤリングした物であり、後のセイモア・ダンカン社の看板製品の「JB」(契約などの関係上、JEFF BECK・モデルと名乗ることが出来ないために「JB」と名づけられた。「JAZZ & BLUES」と言う説はセイモア・ダンカン氏のジョークが広まったもの)に繋がっていったとされる。またこの時、ベックはヤードバーズ時代に使用したエスクワイヤーとテレギブを交換で手に入れており、今もダンカンの手元にはその当時の姿のままの保管されていると言う。
セイモア・ダンカン社創業後の最初の製品は、意外にもピックアップではなく、当時デビッド・シェクター率いるシェクター社が販売していたブラス素材のリプレイスメント・パーツが火付け役となって大流行の兆しを見せていた市場の流れを反映したであろう製品で、ブラス製のテレキャスターのブリッジユニットだったようである。
1980年代中頃から自らの名前を冠したSeymour Duncanブランドのギターの製作販売を企画。日本でのピックアップの輸入代理店を行なっていた優美音響に製作販売を委託。後の1990年代のある時期に優美音響の倒産に伴い、輸入代理業務および製作販売を日本の(株)ESPに変更していく事になる。ここからESP社との関係が始まったとされ、現在は業務提携以上の間柄(ESPによるセイモア・ダンカン社の買収等)では無いか?と噂されるが、真偽の程は定かでは無い。現在はダンカン・カスタムショップと銘打って、市販品とは区別した製品開発を行う等、別のピックアップ製作ラインを持つ事や、「ダンカン・デザインドピックアップ」と呼ばれ、ダンカン氏が設計までを行ったとされる韓国製ピックアップの登場が有った事から、そう言った噂が囁かれる様になったものと見られる。 楽器の方は日本国内での販売が殆どだったようであるが、現在もピックアップは世界的にディストリビューションを精力的に行っており、リプレイスメント・ピックアップメーカーとしては非常に人気が高い事に変わりは無い。
[編集] 特色
単体で市販されるピックアップについては、本稿前出のジェフ・ベックの為に作成したピックアップ「JB」や、ギブソン社黄金期のバーストと呼ばれる時期のレスポールに搭載されていたピックアップを再現した「the'59」、エドワード・ヴァン・ヘイレンの為に開発されたとされる「CUSTOM・CUSTOM」などのモデルが有名。最近の製品では、2004年に悲劇的な事件で亡くなったダイムバッグ・ダレルの為に開発した「ダイムバッカー」が有った。この事からも判るように、音楽ジャンルに囚われず、非常に柔軟に製品開発を行っていた事や、載せる楽器によっても大きく音が変わってしまう為、一般的に、「セイモア・ダンカン社のピックアップは、ナチュラル、クール、ダーティー」な音質であるといわれる様な、画一的なイメージはあまり役に立つものではない。色々なスタイルの音楽に対応する為に非常に多岐に用意されたモデル群や載せた楽器個々に於いて音質をイメージするべきであろう。よってセイモア・ダンカン社のピックアップの音質を大枠の一言で言い表す事は不可能である。また、一部の個人の楽器ビルダーの作成するギターには出荷時に取り付けられ、いわば純正品として採用されている。
現在も続くこの会社の業務の本懐は、ミュージシャンらの要望を受けてギターやベースのピックアップを開発している事にあり、非常に多くのモニター参加者や有名プレーヤーとのピックアップ開発及び提供のエンドースメント契約を交わしていることでも有名である。ビル・ローレンス、ディマジオなどと並び、メーカー純正のピックアップを取り替えて新たな音質を得るリプレイスメント・ピックアップメーカーのさきがけである。