セロ弾きのゴーシュ
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『セロ弾きのゴーシュ』(セロひきのゴーシュ)は、宮沢賢治の童話作品。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] あらすじ
小さな町にある交響楽団のセロ弾き、ゴーシュはあまりにも下手で、楽団の指揮者にいつも叱られていた。しかし、カッコウを始め、様々な動物が夜毎にゴーシュを訪れ、様々な理由でゴーシュに演奏を依頼する。次の音楽会で、ゴーシュは見事成功を収めるが、彼の心を本当に理解する者は居ないのだった……
[編集] 登場人物
- ゴーシュ
- この作品の主人公。名前はフランス語の「不器用な」という単語から来ているという説がある(他にフランス語の「カッコウ」、チェロの擬音という説もあり)。「金星音楽団」という交響楽団に所属しているが、名前の通りセロ(チェロ)の演奏が下手でいつも楽長に怒られていた。しかし夜中の動物たちとの触れ合いで次第に成長していく。
- 三毛猫
- ゴーシュの家を最初に訪れた動物。勝手に上がってきたうえゴーシュの畑から青いトマトばかり持ってきて、さらには生意気な知ったかぶりをしたので、散々にいじめられる。
- かっこう
- かっこうの鳴き声のドレミファ(音階)を正確に習うためにゴーシュの家へ来た。ゴーシュに心身ともに傷つけられ、彼の後悔は後の祭りであった。
- 狸の子
- 小太鼓の係で、ゴーシュのセロに合わせてこいと言われてゴーシュの家へ来た。
- 野鼠の親子
- 最後にゴーシュの家へ来た動物。ゴーシュはこの野鼠によって、自分のセロの演奏で動物の病気が治ると知る。
[編集] 賢治とチェロ
本作には、賢治自身が実際にチェロを練習した経験が反映されていると考えられる。賢治は農民の啓発と生活改善を目的とした「羅須地人協会」を主催していた時代に、農民楽団の実現と自作の詩に曲を付けて演奏することを目指してチェロを購入し練習した。1926年に上京した際には、新交響楽団(現在のNHK交響楽団の前身)の楽士だった大津三郎の自宅に練習のために通っている(賢治は「三日でチェロを演奏できるようになりたい」と頼み、大津は困惑しながらもレッスンを引き受けた。またこのレッスンは1928年の上京時にも行われたのではないかという説がある)。また、賢治自身の書き込みのある独習本が現存している。こうして熱心に取り組んだチェロであったが、お世辞にも演奏はうまいとはいえず、「ゴーゴースースー」と鳴るような状況であったと伝えられる。
賢治のチェロには孔が開いており、この孔が本作に出てくる子鼠が出入りする孔のヒントになったともいわれる。このチェロは後に友人であった花巻高等女学校の音楽教諭・藤原嘉藤治のチェロと交換され、戦争中は藤原が所有していたために、賢治の実家の空襲被害から免れることができた。現在、花巻市の宮沢賢治記念館に展示されている。
[編集] 映像化作品
- 1949年 - 映画『セロひきのゴーシュ』/製作:日本映画
- 1963年 - 映画『セロひきのゴーシュ』/製作:学研映画局/声の出演:加藤弘、上田恵子、堀絢子、松島みのり、貴家堂子、増山江威子
- 1982年 - 映画『セロ弾きのゴーシュ』/製作:オープロダクション、監督:高畑勲/声の出演:佐々木秀樹、雨森雅司、白石冬美、肝付兼太、高橋和枝、よこざわけい子、槐柳二、矢田耕司、峰あつ子
- 原作に登場する「インドの虎狩り」や「愉快な馬車屋」は元々架空の楽曲だが、1982年のアニメ映画版では音楽を手がけた間宮芳生が新たに作曲した。
[編集] 外部リンク
[編集] 参考文献
- 「セロ弾きのゴーシュの音楽論」(梅津時比古、東京書籍、2003年)
- 「ゴーシュという名前」(梅津時比古、東京書籍、2005年)
- 「チェロと宮沢賢治」(横田庄一郎、音楽之友社、1998年)
- 「宮沢賢治の音楽」(佐藤泰平、筑摩書房、1995年)