ダウンバースト
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ダウンバースト(下降噴流)とは気象現象の一つで、局地的・短時間に上空から吹く極端に強い下降気流である。
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[編集] 現象
積雲や積乱雲は、通常強い上昇気流によって形成されるということが知られているが、積乱雲が発生してからある程度の時間がたつと、逆に下降気流が観測されることもある。この下降気流のうち、地上に災害を起こすほど極端に強いものをダウンバーストという。ダウンバーストは様々な(往々にして深刻な)被害を及ぼすことが多く、特に航空機にとっては深刻で最も注目すべき気象現象である。なお、下降気流の風速は、90m/s以上と壮絶なものに達することがある。
ダウンバーストは地上付近に吹き降ろした後、地面にぶつかって水平方向に広がる。この広がりが約4km未満の比較的小型なダウンバーストはマイクロバースト、広がりが4km以上の大型のダウンバーストをマクロバーストと呼んでいる。
[編集] 発生原因
発生原因としては、主に2つ挙げられる。一つは、積乱雲の中で、膨大な量の水滴が落下しているため、それにより空気が押されることによる。落下する水滴による直接の押し下げのみならず、摩擦のために水滴と共に動く水滴周辺の空気の落下もこともこれを補強する。もう一つは、気化熱によるものである。落下中の水滴は空気の乾燥した層を通過する際、急激に蒸発しようとする。このとき熱(気化熱)が奪われて温度が低下し、水滴およびその周辺の密度が増し、これにより下降気流のスピードも増す。これに雹やあられが混じっている場合には、氷が一気に蒸発する際の昇華熱が奪われるため、さらに強い勢いで下降する。この様な物理現象を繰り返しながらより激しい下降気流が形成される。海で発生した場合、「白い嵐」と呼ばれる。
[編集] 影響
ダウンバーストの被害は日本でも多く報告されているが、特に被害が深刻なのは米国である。米国の研究によるとダウンバーストは雷雨がある日には約60~70%もの高い確率で起こるということが知られている。また、上に述べたように、水滴が乾燥した層を通過する際、下降気流が強まるので、このことからも乾燥した大気の層の上に湿潤な大気の層があるときは、強いダウンバーストが起こりやすい。しかしこの場合は水滴が完全に蒸発してしまうので降水は観測されない。また、その逆に湿潤な層の上に乾燥した層がある場合もダウンバーストは起こりやすく、これが強い降水や雹があるときに観測されるダウンバーストである。また、前者を乾燥したダウンバースト、後者を湿ったダウンバーストという。以上のことから、ダウンバーストが発生するには乾燥した層が大気中に存在することが必要条件といえるだろう。
離着陸を行っている航空機にとって、このダウンバーストは墜落に直結する現象である。そのため、近年では空港に気象用ドップラー・レーダーを設置し、その発生を検知・予測し、墜落事故の防止を行う研究が進んでいる。
[編集] 関連項目
- 竜巻
- 気象
- 空港
- ドップラー・レーダー
- 藤田哲也
- JR羽越本線脱線事故(ダウンバーストが原因の可能性が大きい)