ディープ・スロート (ウォーターゲート事件)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ディープ・スロート(Deep Throat)は、ウォーターゲート事件で内部告発を行ったアメリカ政府高官を指す仮称である。1972年1月に公開され大ヒットしたポルノ映画『ディープ・スロート』にちなんで名付けられた。
ディープ・スロートが誰なのか長い間謎であった。その正体としてフレッド・ラルー(Fred LaRue、ニクソン政権幹部で事件の隠蔽工作を行ったとされる)や、ジョージ・H・W・ブッシュ(George H.W.Bush、のちの第41代大統領)、ヘンリー・キッシンジャー(Henry Alfred Kissinger、当時の国務長官)らの名が噂されたが、2005年5月31日に、当時の連邦捜査局(FBI)副長官だったマーク・フェルト(William Mark Felt)が自分がディープ・スロートであったことを公表した。また、当時事件を取材したワシントン・ポストのボブ・ウッドワードも、マーク・フェルトがディープ・スロートであったことを認めた。
なお、公開済みのニクソンの録音テープなどから、政権側は当時からフェルトがディープ・スロートではないかと疑っていた節がある。
映画監督アンドリュー・フレミングは、「ディープ・スロートの正体はわずか15歳の2人の女子学生であった」とする大胆な設定のコメディー映画『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』(原題:Dick、米、1999年。キルスティン・ダンスト、ミシェル・ウィリアムズ主演)を製作した。
[編集] 内部告発に対する評価
ディープ・スロートの正体が明らかになるとともに、告発行為への様々な評価が噴出した。
元上院議員のマイク・グラベルは「彼は英雄であり、自由勲章を与えられるべきだ」と告発を称賛した。一方、ニクソンのスピーチライターでもあったパトリック・ブキャナンは「彼が30年以上隠し通してきたのは、自分の行為を恥じているからだ」と非難した。43代大統領ジョージ・W・ブッシュは、フェルトの評価について「判断するのは難しい」と述べた。
告発動機の一つに、フェルトのFBI長官昇進問題への個人的な不満があったとされる点も、評価が分かれる一因とみられる。