トイレットトレーニング
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トイレットトレーニングとは、排泄に絡む便所の使用に関する訓練を言う行為。主に家庭内で最も基本的な躾として行われる。
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[編集] 人間のトイレットトレーニング
人間の幼児の場合には、おむつの取れた後、一般のトイレで用が足せるようにすることがトイレットトレーニングである。お尻のしつけとも言う。
排泄の間隔が2~3時間おきになって、一人歩きができる様になっていく年齢から開始される物である。 お座りができるようになれば、おまるに座らせて排泄させることも不可能ではないが、早くからトイレでできるできないは赤ん坊によって能力、個人差が大きく、一旦トレーニングに成功したとしても逆戻りすることが少なくない(オムツの節約にはなるが)。
最初の内は他人(親や兄弟)のトイレ使用を見せ、出かける前や昼寝・夜寝る前などの生活習慣にあわせて定期的に行われる物とされ、また排泄の我慢といった初歩過程から、トイレの使用を経て、最終的には自分で着衣を脱いで用便するまで、幾つかの段階があり、開始から最終段階に至るまでには、相応の期間が必要とされる。
始めの頃は溜まっている感じが本人に自覚できず、なかなかうまくいかない事もあり、関係者(親などの保護者)がイライラする・幼児自身も上手く出来ない事に癇癪を起こす時もあるが、その後の人格形成に影響を及ぼす恐れがあるので、慎重に・また気長に進める必要があるとされ、育児書では必ず多くのページを割いて説明されている。特に同性の親・兄や姉が行う(手本を見せるなど)方が、上手な方法を伝えやすいといわれている。
近年では万一漏らしてしまっても汚物が外部に漏れないが、一定の不快感(皮膚が濡れた感じがする)という使い捨てのトレーニングパンツもあり、これを利用する保護者もある。徐々に普通の下着に慣れさせる過程で、一時的に就寝前に着用する形で利用される。
- なお児童虐待では、トイレットトレーニングの失敗から幼児を虐待するケースもあると見られる。特に一旦成功したと思われた子どもが、またお漏らしをするようになった場合、保護者は叱責してしまいがちだが、叱られた子供は萎縮して、失敗しやすくなり余計にトレーニングを難しくする事も多い。冷静さを保てないなど、保護者が焦りを感じている状態では悪循環に陥る場合も見られるため、家族内で家事の分担をする・ちょっとトレーニングを中断してみるなどして負担を減らす事で、心にゆとりを持ってトレーニングを行う事が勧められる。
- トイレットトレーングが暗礁に乗り上げた場合は、小学校入学までに1人でトイレにいけるようになれば充分であると保育者が開き直るとよい。夏に成功していたトレーニングが秋冬になって失敗するようになった子供の場合は、次の春までトレーニングを中断することも考える。
一方、これらの躾が当人の性格を決定付ける上で、かなり重要な要素であると考える心理学者もあり、教育の観点から様々な方法論が論じられている。しかし排泄は当人の自発行動による所もあるため、あまりこれらを気にし過ぎるのは勧められない。「トイレが使えることは楽しい」や「皆に褒められる」といった、トイレと当人の良好な関係を築く事が肝心であろう。
[編集] 方法
個人差があるので気楽に進めていくこと、おまるやトイレに対する警戒心を解き、楽しんで進めていくことが重要である。特に成長具合は人によって得手不得手があるため、所定の年齢になったら・または特定の活動が見られたら…とする明確な目安は存在しない。大抵は自分の意思を伝えられるようになったら、次第に始められる物である。
最初から一人で行う事を求めたり、排泄に失敗した際にきつく叱る等して無闇に恐怖心を与えると萎縮してしまい、便意を上手に伝える事が出来なくなる・限界まで我慢し余計に突発的に便意を訴えるなどの弊害が発生する。そのため楽しく学習できるよう、絵本やビデオ・シールを使ったり(おまるやトイレでできる度に貼っていく)する人もいる。またそれ専用の知育玩具も存在する。失敗は叱らず、上手に出来た場合に大いに褒めて動機付ける事が勧められている。
幼児の場合、排泄のコツが上手くつかめず、最初は「出る!」と言っても出なかったり、出ると言わなくても出てしまうことが多いが、徐々に安定してくる。安定してきても突然「おしっこ!」などと言い出すこともしょっちゅうあるため、トイレ探しに右往左往しないためにも外出の際には携帯トイレを持参(大小便対策)する人もある。また、おむつが取れていてもおむつがあると、急に催したときなどに当てたり、携帯トイレ代わりに使うこともできる。屋外排泄(野ション、野ぐそ)を行うこともある。日本やアジアでは街中でしてしまっても比較的寛容であるが、シンガポールの街中などのように厳禁な国もある。ちなみに保育所では散歩中など屋外排泄させないように配慮している。なお排泄の意欲を伝えてきた場合でも、単なる「誤報」である場合もあり、また就寝前等の生活習慣上での訓練でも、多少待っても出そうに無い時は、適当に切り上げるなどの工夫も必要とされている。
都合上、下半身の着衣を全て脱がして行うことが多い。友達や親が見本を見せることもある。
トイレットトレーニングには、おまるや補助便座が用いられることが多い。おまるや補助便座は、幼児が安定して用を足しやすい。成長の過程に沿って、手前の便座がすぼまった所に大人と逆向きに直接座らせる。補助便座を使う時も直接便座に座らせる(特に男の子)時も、なるべく後向きに座らせた方が良い。理由は大人と同じ向きの場合だとお尻が落ちてしまう事や、補助便座や便座を掴んでいるので前屈み状態になっておりバランスを崩したときに床まで落ち、最悪の場合成長過程の弱い頚椎にダメージを負う恐れがあるからである。逆向きであれば左右はすぐ壁であり転んでも高度差の無い便座シートの上なので安全である。
和式トイレの場合、男女共に大便はしゃがませてさせるが、小便は初期のころは抱え上げてさせる。
小便が出にくいときには、横で「シー…(排泄の際の擬音語)」と言ってやるか、陰茎に水をかけてやると出やすくなる。
[編集] 性差
排泄では、性別によって体の機能が異なるため、教育方法にも違いが見られる。
[編集] 男の子の小便
男の子の場合、立ちションができるようになっていた方が望ましい。その理由は、公衆トイレにおいて男性用の個室が数少ないためである。男性が小便する場合、下着とズボンの前開きから陰茎だけ出してするが、小児男子の場合、陰茎が小さく、かつコントロールができないため、下半身の着衣を一旦 全部脱衣させた方が良い。そのため、おむつが取れてから排尿がうまくコントロールできない間、下穿き(下着)は陰茎を出す穴のない女児用やベビー用のショーツやブルマでもよいが、小学校に上がる前までには陰茎をはいたまま出せる男児用ブリーフやトランクスなどに切り替え、ズボンの前開きから陰茎を出して排尿できるように訓練しておく。
便器の正面に立たせ、必要とあらば介助者が陰茎を持って行う。便器との間はできるだけつめる。なるべく他の人が見本を見せるとなお良い。次に排尿させる。終わった後は、周囲を汚さぬよう配慮し 陰茎を振る(紙で拭く必要は無い)。ただし最初の頃は失敗して便器内に排泄できず便器外に小便が散ってしまう事もあるが、徐々にきちんとできる用にさせる。(小便も、大便と同様に便器に屈んで排泄するなどの躾が行われる場合もあるが、前出の「立ちション・トレーニング」の観点からは、余り勧められないとされている。稀に青年に成ってもこれが習慣化している人のケースも聞かれる)初期のトイレットトレーニングは重要な意味を持つと考えられる。殊に、便器の外を尿で汚さぬよう躾ける事は質の高い生活を送る上で重要である。
なお男児の居る家庭では排泄に失敗してもトイレ内の床掃除を随時行えるよう用意する必要があり、このため便所内にトイレマットを敷いたり、スリッパを消毒し易い塩化ビニル樹脂製の物を用意するなどの工夫が見られる家庭もある。
[編集] 女の子の小便
女の子の場合、便器に座らせて(和便器の場合はしゃがんで)させる。終わった後は紙で拭く。生殖器と排泄器が近接している関係上、前から後ろへという向きで拭く事が多くの育児書で推奨されている。これを怠ると、ウイルスによる感染症などの問題が発生する事もあるので、注意が必要である。
近年ではウォシュレット等に代表されるシャワートイレが多くの家庭にも普及した事もあり、最初の内は保育者がこれを操作、次第に一人でもこの機器を操作して、お尻を清潔にする習慣を付けさせる家庭もある。
[編集] ペットのトイレットトレーニング
ペットの場合、所定の位置で排泄するようにしつけることを言う。 進め方は動物の種類・生活環境によって異なるので、それぞれの飼い方を説明した書籍等を参照されたし。
ペットの中にはほとんど躾が不可能な種類の動物や、幾ら訓練してもなかなか憶えない個体も在る。特に鳥類は飛ぶために常に体を軽くしなくてはならない事から、排泄を我慢するという概念もそのための器官もないとされ、まして定位置で排泄するというトイレットトレーニングは、ほぼ不可能であるとみられる。
動物は場所と臭気によって自身の排泄場所を決定する傾向が見られるものも多い。このため、間違った場所に排泄してしまったら、衛生上の観点から清掃するのは勿論の事だが、それらを充分に消臭する必要がある。また一度決定した排泄場所は無闇に移動させない方が良いとされ、複数トイレを設置するとかえって戸惑わせる結果に成る場合もある。また排泄中の動物は非常に神経質である事から、静かな場所に設置する事が勧められる。
動物は本能的に、種類によって好むトイレの様式があるため、近年では様々なペット用トイレ用品も見られる。中には猫に洋便器を使用させるためのトレーニングキットも存在するが、言葉が通じない(ただし語調の強弱は判る動物も多い)ため、幼児よりも訓練期間は長く掛かる場合が多い。
犬や猫の場合は人間の場合とは異なり、失敗したら叱ることが多いが、厳しく叱るのは逆効果とする解説書もある。 とはいえ同じ犬や猫でも、躾にくい品種もあり、幾ら訓練してもなかなか憶えない個体も稀に見られるため、気長に教育する必要が在るとされる。
なお犬の場合では散歩前に用便を済ませるようにしつければ、散歩中に糞を拾う手間が省けるとされる。特に盲導犬のような補助犬では、主人が許可したときのみ排泄するようにしつけることが必須である。そこまで行かなくとも、便意を飼い主に伝えるよう教育する事も品種・個体によっては可能であり、よく躾られた飼い犬では、ペット用の携帯トイレを使用するものもある。
[編集] 関連項目
- 幼児自身が理解しやすい幼児語を用いると、幼児は排泄行動を明確にイメージしやすくなり、排泄の意思をきちんと伝えやすくなる・排泄の際に上手に行う学習がしやすくなると考えられる。