ハイペリオン (小説)
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ハイペリオン (Hyperion) は、 アメリカのSF作家ダン・シモンズ(Dan Simmons)が1989年に発表したSF小説。 連作となる、『ハイペリオンの没落』(The Fall of Hyperion:1990年)、『エンディミオン』(Endymion:1996年)、『エンディミオンの覚醒』(The Rise of Endymion:1997年)で完結する壮大な世界を描いている。 ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。
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[編集] ストーリー
聖遷と呼ばれた人類の地球脱出後から約800年が経過。 28世紀、テラフォーミング技術によってさまざまな惑星に進出、移住した人類は、200以上の惑星からなる1500億の人間で構成される宇宙連邦「ワールドウェブ」を形成。惑星間は「転移ゲート」と呼ばれるネットによって結び付けられ、人々は一瞬にして惑星間の移動ができた。その技術を管理する独立A.I.群「テクノコア」は超演算能力により数世紀先の未来まで予測することが可能で、連邦繁栄の基盤となる存在だった。
「テクノコア」に予測できない不確定要素を持ち、それを理由として連邦への併合を拒んできた辺境惑星「ハイペリオン」があった。そこには、古来から人々の畏怖と信仰を集める未解明の建造物「時間の墓標」があった。時間を逆転させる力「抗エントロピー場」を持ち、時間を遡行して存在しつづけていると言われている「時間の墓標」は、時を超越する殺戮者「シュライク」を封じこめていると言われ、シュライク教団により守られていた。
「抗エントロピー場」の原因不明の膨張が観測され、墓標に何らかの異変が起きていた。同時期、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く「時間の墓標」の謎を解明するため、7人の男女を巡礼としてハイペリオンへ送りだした。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 解説
ハイペリオン4部作の導入部となり、7人の巡礼が「時間の墓標」へ向かう旅の中で、それぞれが自らの物語を語り、巡礼行に参加するまでの経緯や意図を語る構成になっている。各編がホラー、恋愛、ハードボイルド、戦記、ファンタジーとして独立した短編としても楽しめる内容。個々の物語を読み進むことで全体の設定が明され同時に謎も深まっていく。
タイトルの『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』からも解るように、ジョン・キーツの物語詩を元に再構築した物語で、物語の中に物語を入れ込み、巻と巻を対にし、さらに執筆者が全体の物語を語るキーツの役割を担っている。多重の入れ子構造を持った小説となっている。
[編集] 主な登場人物
[編集] 七人の巡礼
- <神父>ルナール・ホイト
- <詩人>マーティン・サイリーナス
- <兵士>フィドマーン・カッサード
- <探偵>M・ブローン・レイミア
- <学者>ソル・ワイントラウブ
- <修道士>ヘット・マスティーン
- <領事>名前は本編中に出てこない
カテゴリ: アメリカ合衆国の小説 | SF小説