バガトル
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バガトル(baγatur; 中世モンゴル語: ba'atur; 現代モンゴル語: баатар (baatar); 近世ペルシア語: بهادر (bahādur);近世テュルク語: bahadur)は、テュルク語やモンゴル語における称号のひとつ。「勇者」を意味する。中世モンゴル語ではバアトル(バートル)、現代モンゴル語ではバータル。中央アジア以西において近世ペルシア語およびチャガタイ語、オスマン語などではバハードゥル(バハードル)という。
歴史上テュルク語・モンゴル語話者の遊牧民が活動したモンゴル高原において、主に古代から中世にかけて首長層の称号として使用された。古くは匈奴の冒頓単于の「冒頓」がこの語と同系の語の漢字音写であったとする説もある。
モンゴル帝国勃興期のモンゴル高原では、ハーンを名乗るには至らない有力者が称号として用いたり、戦争で活躍した勇士に対して贈られたりすることが多かった。モンゴル帝国が中央ユーラシアに広く拡大したのに伴い、その継承政権である中央アジアのテュルク系諸国家や、ロシア、インド、西アジア等でも称号や人名の一部としてバハードルが用いられるようになり、現在もインドや中央アジアに広く見られる。
モンゴル高原においては、モンゴル帝国の衰退後も原義である「勇者」「英雄」の意味で人名や称号に用いられてきた。モンゴル国の首都ウランバートル(現代モンゴル語: オラーンバータル)は、旧来イフ・フレーと呼ばれていた町が、モンゴルの社会主義化に伴って「赤い英雄」を意味する現在の名前に改名されたものである。
[編集] 関連項目
- モンゴル
- イェスゲイ・バガトル
- バトゥル:満州族における英雄称号。清朝で使用された。