ピサの斜塔
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ピサの斜塔 (Torre di Pisa)は、イタリアのピサ大聖堂の鐘楼であり、観光スポットである。1173年8月9日の着工時には垂直であったが、13世紀には傾いていることが発覚した。高さは地上55m、階段は297段あり、重量は14,453t、地盤にかかる平均応力は50.7tf/m2と見積もられている。現在の傾斜角は約5.5度で、傾斜の進行は止まっているそうである。
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傾斜と克服
工期は、第1工期1173年~1178年、第2工期1272年~1278年、第3工期1360年~1372年で、工期間隔が非常に長いのが特徴である。というのも第1工期後には既に塔が傾きはじめ、第2工期でややその傾斜を修正しつつ建設が再開されたものの、その傾きはなおも止まらず、第3工期を迎えたのである。オリジナルの建築計画上では現在あるものよりも遥かに高い鐘楼ができる予定であったという。けれども「ピサの斜塔」として世界で最も有名な不等沈下の事例となってしまい、現在のような姿をなんとか保っているのである。この傾斜の原因は、地盤の土質が不均質であったことだと考えられている。塔の南側が大きく沈み込んでいるが、これは南側の土質が相対的にやわらかく年月を経るうちに傾き始め、それにより回転モーメントが増大してますます地盤に対する負担が大きくなり、沈下が進行するという悪循環に陥ったのである。
1935年、地下水が地盤をやわらかくしてしまうのを防ぐため薬液を注入して地下水の浸入を止めようとする応急処置がとられた。しかし、現場の地盤は鋭敏比(詳細は土質力学の項を参照)が非常に高く、攪乱によって強度が著しく低下し、沈下は更に進んでしまった。1960年代、現地の地下水汲み上げによって地下水位が下がり、またも傾斜進行という危機を迎え、1964年2月27日ついに、イタリア政府はピサの斜塔を崩壊から回避するための支援を求めた。
1990年1月7日、安全上の問題により公開を休止し、傾斜角を是正するために改修工事が行われた。当初は沈み込んだ側と反対の北側におもりを載せることでバランスをとろうとしたが、根本的な解決には至らなかった。その後、改修工法には世界各国の建設会社から様々な提案がなされたが、最終的に、北側の地盤を掘削するという工法が採られた。他にも、薬液を注入して地盤改良を行うなどの案もあったが、透水性の低い粘土層への注入は難しく、強引に注入すれば攪乱が起こり前述の鋭敏比の問題は避けられなかった。
2001年6月16日、10年間にわたる作業が終了し公開を再開した。
落体の法則
ガリレオ・ガリレイは物体が自由落下するときの時間は落下する物体の質量には依存しないという法則を実証するために、ピサの斜塔の頂上から大小2種類の球を同時に落とし、両者が同時に着地するのを見せたとされる。しかし、この故事はガリレオの弟子ヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニ (Viviani) の創作で、実際には行われていないとされる。
関連項目
外部リンク
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