ファーストレディ
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ファーストレディー (First Lady) とは、国家首脳の妻をさす。妻がいない場合は近親の女性がファーストレディーとなることもある。なおカタカナ表記で短母音で「レディ」とするものが普及しているが、実際の発音は英語でも日本語でも長母音の「レディー」である。
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[編集] 概要
ファーストレディーは私的には夫である首相や大統領の日常の暮らしを支えるかたわら、公的には首脳の非政治的行事(文化事業の視察、運動競技の参観、来賓の歓迎行事や晩餐会など)に参加したり、首脳の外国訪問に同伴したりする。首脳が外国訪問に妻を伴うのは、かつて王侯が遠方へ出かける際には必ず妃を伴った習慣の名残である[1]。
首脳が未婚だったり離婚している場合、また妻が病弱だったりすでに死去している場合には、娘・姉・妹・嫁などといった首脳の近親の女性がファーストレディーとなる。日本の例では田中角榮総理の妻・はなが病弱だったため、長女・眞紀子がファーストレディーを務めた例がある[2]。アメリカでは大統領が在任中に妻と死別したため近親の女性が代役を務めたり、またそののち大統領が再婚したりといった例がいくつかあり、このため現大統領が42人目の大統領なのに対して現ファーストレディーは51人目となっている。
なおファーストレディーには専門の警備がつくのが一般だが、外国にはファーストレディー専用のオフィスを備えた官邸もある(アメリカ ホワイトハウスのイーストウイングなど)。
[編集] 用例
- アメリカの大統領の妻の正式呼称。「ブッシュ大統領夫妻」を「President Bush and Mrs. Bush」または「President George Bush and First Lady Laura Bush」と言う。
- アメリカの州知事の妻の通称。なお大統領や州知事が女性の場合は夫を First Gentleman と呼ぶことになっているが、現在までのところそうした例はまだなく、夫は単に Mr. 〜 と呼ばれている。
- 日本の内閣総理大臣の妻の通称。
- 各国の首脳の夫人の通称。
- 大企業の最高責任者の夫人の比喩的な通称。
- 芸術や専門職などで第一人者の比喩的な通称。
[編集] 逸話
アメリカ第三代大統領のトーマス・ジェファソンは、1801年の就任時には妻と死別していたため、娘のマーサをファーストレディーとしていた。しかしマーサにも家庭があり、また外交儀礼や社交術が物を言う時代、主婦とファーストレディーの掛け持ちには厳しいものがあった。そこでジェファソンは国務長官ジェームズ・マディソンの妻で親しい友人でもあったドリーをもう一人のファーストレディーとしてホワイトハウスに常駐させた。ジェファソンが二期八年で引退を表明すると、その後継に出馬して当選したのがこのマディソンで、彼も大統領を二期八年務めている。
したがってドリー・マディソンは、「親族ではないファーストレディー」(唯一のケース) であり、一人の大統領に対して同時に存在した「二人目のファーストレディー」(唯一のケース) であり、二人の大統領を支えた「二代にわたってのファーストレディー」であり (唯一のケース)、16年間もホワイトハウスを生活の基盤とした「最も長いファーストレディー」(最長不倒記録) となった。
[編集] 注
- ^ 一国を代表する王と妃は一心同体という観念から。
- ^ 一方で、何事につけても旧来の慣例にこだわらなかった小泉純一郎総理は、独身 (離婚) にもかかわらず5年間の在任中一度もファーストレディーの代理をおかなかった。
[編集] 関連項目
- アメリカのファーストレディー (英語)
- 世界のファーストレディー (英語)