フリップフロップ
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フリップフロップは1ビットの情報を保持することができる回路で、順序回路の基本要素である。コンピュータの主記憶装置やキャッシュメモリ、レジスタを構成する基本回路の一つである。組合わせ回路を単なる組合わせ論理を実現する回路としてでなく、入力に対して遅延した出力を入力側へフィードバックすることで情報の保持に用いるところに特徴がある。これは組み合わせ回路では一般にネガティブな性質とされる入力信号に対する出力信号の遅延をフィードバック・ループを構成することで逆に利用しているところが興味深い。その構造は継電器(リレー)を用いた自己保持回路(セルフホールド回路)にも類似している。フリップフロップはその構造上揮発性である。即ち情報は通電中のみ保持され、電源が遮断されると保持していた情報は失われる。フリップフロップで構成するRAMをSRAMと呼ぶ。
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[編集] 得失
フリップフロップは内部が論理回路で構成されているため論理回路に準じる早い動作速度が得られる。例えばコンピュータの記憶装置を構成する回路としてよく用いられるもう一つの方式であるDRAMの記憶セルと比較した場合、記憶内容の変更に際してコンデンサ(キャパシタとも言われる)の充電/放電を待つ必要がなく、記憶内容の読み出しについては内容に影響を与えない非破壊読み出しであり、定期的なリフレッシュ動作も不要である。一方、1bitあたりの回路が複雑になるため一般に大規模になると1bitあたりのコストは高くつく傾向がある。 このような性質から近年ではフリップフロップをキャッシュメモリやCPUのレジスタなど比較的小容量で高速性が要求される部分に利用し、主記憶では主にDRAMを利用するといったように記憶階層を構成して他の方式の回路方式の記憶装置と組み合わせた形で利用することが多い。
フリップフロップはその構造と機能によってRS型(SR型とも呼ばれる。Set-Resetの略)、JK型(JackKnifeの略)、D型(Delayの略)、T型(Toggleの略)といった種類に分類される。
[編集] 回路の種類
[編集] RS型
Rリセット・Sセットの2入力であるところから由来する。
RS型フリップフロップのブロック図と真理値表を示す。
回路図 | 真理値表 | ||||||||||||||||||
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RS型は同時にRとSに入力があると、結果が不定になる。
[編集] JK型
Jを「Jack」、Kを「King」と見立て、出力のQ即ち「Queen」を「Jack」と「King」が奪い合うところに由来している。
JK型フリップフロップのブロック図と真理値表を示す。
JK型は同時に2つの入力をHにできるのがRS型と違う。
回路図 | 真理値表 | ||||||||||||||||||||||||||||
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[編集] D型
D型フリップフロップのブロック図と真理値表を示す。
回路図 | 真理値表 | |||||||||
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D型は厳密にはフリップフロップとラッチとも呼ばれるものがある。フリップフロップはT端子のいずれかのエッジで 必ず値が保持されるが、ラッチはT端子がアクティブな時に値は通過し非アクティブな 時に、直前の価を保持する。D型フリップフロップとして作られている ロジックICには、プリセット、クリア端子が備わっているものもある。
[編集] T型
JK型のJとKをひとつにしたものと同じ。 T型フリップフロップのブロック図と真理値表を示す。
回路図 | 真理値表 | |||||||||||||||
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T型フリップフロップはカウンタとも言われる。T端子の 入力が1周期変化(High→Low→High)するたびに出力が反転する。
[編集] フリップフロップと標準ロジックIC
RS型を除き、標準ロジックICとして提供されている(RS型は構造が簡単であり、NANDゲート2つですむので、NAND標準ロジックICを使えば十分だからである)。
また、ピン数が4つから6つ程度なので、1つのロジックICに2つ以上含まれていることがほとんどである。