ベレッタM1934

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

ベレッタM1934のデータ

正式名称	ピエトロベレッタモデル1934
全長	149mm
重量	660g
口径	9mm×17mm (9mmショート弾)
装弾数	7+1発
作動方式	シングルアクション
銃身長	87mm
製造国	イタリア
製造	ピエトロ・ベレッタ社

ベレッタM1934は、イタリアで軍用に開発された自動式拳銃である。

[編集] 開発経緯

第一次世界大戦以前、イタリア軍は制式拳銃として生産性の良くないグリセンティM1910を採用していた。しかし急激に増大する兵器の需要に、当時のイタリアの産業界は対処しきれず、生産された各種の銃器類は全て前線に投入されることとなった。それでも武器の供給が追いつかず、ピストルに関しても例外ではなかった。

ピストルの配備の少なさに頭を悩ませたイタリア軍は、老舗の銃メーカーピエトロ・ベレッタ社に大量生産向けの拳銃の設計を依頼する。そこでピエトロ・ベレッタ社の技師、ギアンドーソはブローバック方式を用いた自動式拳銃を設計、イタリア陸軍にベレッタM1915として提示した。拳銃の不足に悩んだイタリア陸軍はこの安く大量に生産できる拳銃をすぐに採用、量産発注した。のちにベレッタM1915は第一次世界大戦中、イタリアで最も生産された拳銃となった。

[編集] ベレッタM1934の登場

ベレッタM1915の大量生産でピエトロ・ベレッタ社は一躍イタリア最大の銃メーカーとなった。その後ベレッタM1915の技術を踏まえた発展型のベレッタM1931とベレッタM1932を開発、両銃とも小型7.65mm×17弾を使用し小型で使いやすかった。これを改良してさらに部品数を減少、強度を上げたベレッタM1934を開発した。小型でシンプルな作りによって故障の少ないこの拳銃は1934年、イタリア軍に制式拳銃として採用され、第二次世界大戦全般に渡ってイタリア陸軍全般に使用されることとなった。

近代的な軍用拳銃の必要条件を満たした本銃は各国のオートピストルの中でも特に性能がよく、人気も高かった（第二次世界大戦の北アフリカでイギリス軍がイタリア兵から鹵獲したベレッタM1934を自分の装備に使用していたという話もある）。

[編集] ベレッタM1934の長所・短所

長所

小型軽量で基本的に扱いやすい銃だった。
単純なブローバック方式で、部品も少なく、故障しにくかった。
最大の長所は、ベレッタ社の拳銃が1920年代から採用していたスライド上の大きな切り欠き構造で、このおかげで薬莢の排出が確実になった。

短所

手動セフティは、もともとスイッチの位置が悪い上、切り替えの時には大きく回転させる必要があったので、操作性が良くなかった。これは、シングルアクションの拳銃としてはあまり有利とは言えない構造であった。克服のため、スライド上に小さい角度で操作できるセフティを装備した試作品も作られたが、一般向け量産はされなかった。
軍用制式拳銃としては9mm×17弾はやや威力が弱かった。

[編集] ベレッタM1934のその後

ピエトロ・ベレッタ社は1945年、イタリア敗戦まで拳銃や機関銃を作り続けた。しかし大戦末期になると会社はイタリアに進駐していたドイツ軍に接収、ドイツ軍及びそれに協力する組織用に生産を行なうことになった。しかし、この時期になるとM1934は製作精度・仕上げが次第に雑になり、粗悪な品質になった。

大戦後、ベレッタ社は残った部品をかき集めることから、ベレッタM1934の再生産を始めた。再編されたイタリア軍や警察でもベレッタM1934は制式採用された。外装デザインの少変更（グリップデザイン等）を加えられながら生産された。アメリカ販売版は「Ｍ９３４」の名称で販売されたが、後継モデルのM70系が1950年代以降に登場したことで生産終了した。

[編集] ベレッタM1934の登場するメディア作品

メダル・オブ・オナーアライドアサルトリロード2ND（WINDOWS用ゲーム）
NOIR（TVアニメ）

主人公・夕叢霧香が使用する。
機動戦士ガンダム（TVアニメ）

ジオンのスパイであるミハル・ラトキエが携帯していた。宇宙世紀でも装薬銃が現役であるとはいえ、骨董品の領域に達しているであろうこの銃を使っていた理由は不明。→厳密にはスライド先端部のデザインが違う。当時の雑誌「アニメック」のいい加減な記述が元で広がった。
ルパン三世 (TV第1シリーズ)

白乾児（パイカル）が使用した。
大追跡（TVドラマ）

藤竜也・加山雄三　主演刑事ドラマ。同僚の女性刑事が使用。