ベンチプレス
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ベンチプレスとは、上半身を鍛える代表的なウェイトトレーニングの種目である。
ベンチプレスを行うだけでも上半身の筋肉の60%~80%を鍛える事ができると言われており、主に大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部が鍛えられる。
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[編集] ベンチプレスの方法
ベンチに横たわった状態で、肩幅より多少広い手幅でバーベルのバーを握り、バーベルを胸の上に下ろす。そして、大胸筋を意識しながら両腕でバーベルを上に押し挙げる。以上の動作をくりかえす。その際の呼吸は、息を吸いながらバーベルを胸に下ろし、吐きながら挙げるのが一般的である。
両足裏はしっかりと床につけ、臀部がベンチから離れないように注意しつつ、ベンチの上でブリッジの姿勢をつくる。ただし、極端に身体を反らせた高いブリッジは怪我の原因になり、トレーニングの効果を減らしてしまうので注意する。
バーベルのバーを握る手の幅を適度に広げたり狭めたりする事によって、筋肉に対する刺激に変化を付ける事もできる。
高重量のバーベルを使用する場合は、危険が伴うため付き添い人が必要となる。 ベンチプレスで持ち上げる重量は、通常、成人男性なら体重の1.5~2倍程度まで可能といわれている。
[編集] 人気
胸板を厚くし、腕を太くするのにも効果があり、逞しい上半身を作り見栄を良くするという効果から、非常に人気のある種目で、パワーリフティングの一種目でありながら、ベンチプレス単独での競技会も数多く開かれている。
パワーリフティングの競技者をパワーリフターと呼ぶが、ベンチプレス競技のみやる者をベンチプレッサーと呼んでいる。
[編集] 日本でのベンチプレス
日本人は一般的にパワー系の種目に弱いとの印象があるが、ベンチプレスはその中でも例外とされ、三土手大介、渡辺雄次など国際大会で多くの優勝者を出している。
国内大会での優勝記録が、そのまま世界新記録になることも珍しく無く、他のスポーツ競技からは想像も付かないほどハイレベルである。
[編集] 判定基準の変化
バーベルを握る手の幅やベンチに横たわる際のフォーム等、ベンチプレス競技には厳密に定められたルールがあり、その基準から外れるといかに高重量を挙げようと失格になる。 日本人の場合、その国民性からルールの範囲内で様々な工夫し、高いブリッジのフォームやバーベルのシャフトの握り方、ベンチシャツと呼ばれる挙上重量を増やす為のサポート用具の改造等、より高重量が挙がるよう日々工夫している。
しかし、外国人競技者から見ると、それら日本人独自の工夫が『フェアでない』と映るらしく、近年日本人に不利と思われるような判定基準になる傾向が見られる。
外国人選手から見て『フェアでない』と言われる理由で一番多いものは、日本人選手のベンチプレスにおける挙上距離の短さである。ベンチプレスは腕が短い方が挙上に有利と言われ、一般的に外国人選手よりリーチの短い日本人はこの点で有利とされる。 また、限界まで身体を反らし高いブリッジを作ることで挙上距離を短くする事は、日本人選手に限らず行われている事だが、日本人選手の場合、前述のリーチの問題も合わせると挙上距離短縮の効果が非常に高く、外国人選手に言わせれば『ほんの数センチバーベルを動かしているだけだ』という印象をあたえる事になる。
もちろん、ルール上は何の問題も無いが、外国選手からのクレームが重なれば他のスポーツと同様に日本人選手に不利なルール改定が行われる可能性は否定できない。
[編集] バリエーション
ベンチプレスに使うベンチは通常水平だが、ベンチに意図的に角度を付けトレーニングに変化をつける事がある。 水平より上に角度をつけた場合をインクライン・ベンチプレスと呼び、下に角度を付けた場合はデクライン・ベンチプレスと呼ぶ。 これらの種目と区別するため、通常の水平なベンチを使う場合を、別にフラット・ベンチプレスと呼ぶ事もある。
[編集] ダンベル・ベンチプレス
ベンチプレスでは、バーベルの代わりにダンベルを使用する事もでき、その場合はダンベル・ベンチプレスと呼ぶ。
ダンベルを使用した場合、扱える重量はバーベルに比較すると落ちるが、筋肉に対する刺激はバーベルを使用する時よりも強いと言われ、こちらの方を好んで行なう者も多い。
ただし、バーベルを使用する場合に比べてテクニックが必要とされるので、高重量のダンベルを用いたダンベル・ベンチプレスは中~上級者向けの筋力トレーニング種目であると言える。
[編集] ベンチシャツ
ベンチシャツとは、ベンチプレスの挙上動作をアシストする為に作られた特殊なシャツで、高い反発力・収縮性を有した生地で造られている。ベンチシャツを着用する事は、以前は公式ルールで禁止されていたが、近年ルール改正により着用する事が許可された。
しかし、ベンチシャツを使用した時と使用しなかった時の挙上重量の差があまりに大きく開いているのを見て、
- 『これでは、自分の力ではなく、ベンチシャツがバーベルを挙げているのも同然である』
- 『道具に頼って高重量を挙げても、意味が無い』
- 『スポーツ性が低くなってしまう』
等と主張して、ベンチシャツ対し否定的な見解を持つ者もおり、再び使用を禁止にすべきだという意見もある。 そのような意見を持つ者のために、ノーギア(ベンチシャツ等を使用しない)ルールの大会も開催されている。
一方で、ベンチシャツを使用する者の中には、自分の身体やフィーリングに合うようミシン等を使って(ルールの範囲内で)ベンチシャツを縫い直す者も存在する。このような調整も競技の一部に含まれるという見方もあり、『ベンチシャツを使えば、誰でも高重量を挙げられる』と言う考え方や、そのような見地からベンチシャツを否定する事は間違っているとする意見もある。
[編集] ベンチフリーク
ウェイトトレーニングは基本的にバランス良く全身を鍛えなければならないのだが、ベンチプレスという種目に熱中する余り、脚部や背部といった他部位のトレーニングをまったくやらず、ただひたすらベンチプレスばかりやる者が存在する。そのような者を『ベンチフリーク』と呼ぶ。
ベンチフリーク達はジムに行っても、そこに存在する多種多様なトレーニング器具には目もくれず、真っ先にベンチを占領してひたすらベンチプレスに明け暮れる。 彼らにとって背部や脚部の筋力はどうでもよく、ただ分厚い胸板とベンチプレスの挙上重量にしか興味は無いのである。
もちろん、ベンチプレスが上半身の代表的なトレーニング種目であるのは確かだが、上記のようなバランスを欠いた鍛錬は、ウェイトトレーニングの本質から逸脱している事は間違いない。
[編集] 全日本ランキング
競技としてのベンチプレスでは毎年全日本年間ランキングが発表される。主な上位ランカー。
男子
- 伊差川浩之(56kg級)
- 帯谷典生(56kg級)
- 中山久幸(60kg級)
- 渡辺洋右(60kg級)
- 東坂康司(67.5kg級)
- 野田俊彦(67.5kg級)
- 兼上頼正(67.5kg級)
- '児玉大紀 世界チャンピオン(75kg級)'
- 高橋恵介(75kg級)
- 渡辺雄次(82.5kg級)
- ふじたひろゆき(82.5kg級)
- 岸本洋一(90kg級)
- 高橋和宏(90kg級)
- 中尾光一(90kg級)
- 伊藤智(100kg級)
- 湯浅正信(100kg級)
- 氏家一郎(125kg超級)
- 三土手大介(125kg超級)
女子
- 白川カオリ(52kg級)
- 福島
- 大庭公子(75kg級)
- 湯浅由佳(82.5kg級)