ペロブスカイト構造
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ペロブスカイト構造とは結晶構造の一種である。元来ペロブスカイトとは CaTiO3(灰チタン石)のことを指し、この名前は発見者であるロシア人 科学者Perovskyにちなんで名づけられた。
ペロブスカイトと同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えばBaTiO3(チタン酸バリウム)の様に、RMO3という3元系から成る遷移金属酸化物 などがこの結晶構造をとる。
理想的には立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを 中心として酸素Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO6八面体の向きは金属Rとの相互作用により容易に歪み、これにより より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する。
これにより、この結晶の物性が劇的に変化する。例えば、 対称性の低下により、モット転移を起こし、金属Mのサイトに局在していた価電子がバンドとして 広がることが出来るようになったり、 金属Mのサイト同士のスピン間の相互作用による反強磁性秩序が崩れ、常磁性に 転移したりする。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rのイオン半径の増加や、 金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。
[編集] マントル内部のペロブスカイト
数十ギガパスカルを超える超高圧の環境では、ペロブスカイト構造は非常に一般的な構造である。この構造には原子を稠密に詰め込むことができるためである。地球内部における主要な化学組成であるMgSiO3は地下約660kmから約2700kmのマントル下部において、ペロブスカイト構造をとっていると考えられる。このMgSiO3を125ギガパスカル、2500k(ケルビン)という超高圧高温環境下におくと、ポストペロブスカイト構造と呼ばれる、より原子が稠密に詰め込まれた相に転移することが明らかにされた。地下約2700kmより深いマントル最下層では、MgSiO3はポストペロブスカイト構造をとっていると考えられる。
[編集] 酸化物高温超伝導体
YBa2Cu3O7-δや Bi2Sr2Ca2Cu3O10 といった酸化物高温超伝導体は全て、ペロブスカイト構造を基礎とした結晶構造をしている。 これら酸化物高温超伝導体には共通して以下のような特徴がある。
- CuO6八面体のような銅酸化物が2次元のシート状に広がっている。
- このシートの上下にはランタノイド等による伝導をブロックする層があり、銅酸化物層とブロック層が交互に積層する構造をとっている。
下図に見られるようにペロブスカイト構造はシート状に並んだMO6八面体層と 金属Rの層が交互に配置している。このような構造による2次元的な電気伝導が高温超伝導において重要な役割を果す。