ポビドンヨード
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ポビドンヨードとは、日本薬局方にも収載されている医薬品で、外用消毒剤の一つである。 外見色は褐色であり、特異な匂いと味がある液体。 商品名として有名なのは、「イソジン」に代表されるうがい薬である。
[編集] 薬効
ポビドンヨードの殺菌効果は、遊離ヨウ素による。ヨウ素等のハロゲンは強力な殺菌作用を持つ(細菌の蛋白質合成を阻害する事によって殺菌力を発揮する)が、従来用いられてきたアルコール溶液(ヨードチンキ、ヨーチンと呼ばれていた。)は人体への刺激が強いため、粘膜にも用いる消毒薬としては使いづらい。そのため、ポリビニルピロリドンとの錯化合物として合成された消毒薬がポビドンヨード(povidone iodine)である。うがい薬から外科手術時の消毒まで広範囲に使用される。
ポピドンヨードの殺菌作用はヨウ素の酸化作用によるため、塗布後30~60秒の経過で最も殺菌力が強くなる。
充分な殺菌効果を得るためには、塗布した後、充分に乾燥させることが必要というのは誤りである。
日本では古くから用いられたきた消毒剤として一定の評価を得ており、特にその持続効果は他の消毒剤と比較して高い。そのため、手術前の皮膚消毒や術野の消毒といった分野で使用されることが多い。 また、人体毒性が低いにも関わらず、一部の芽胞菌に対しても有効性を発揮するため(通常、芽胞菌に対して有効性をもつ消毒剤は人体毒性も高いが)、院内感染に対して有効な消毒剤として注目されている。
なお、ポピドンヨードは衣服等に着色すると落ちにくいため、色消し用の消毒剤としてハイポアルコール(チオ硫酸ナトリウム)が用いられる。
嗽(うがい)薬として有名なイソジンガーグル以外にも、スクラブ剤(手指消毒剤)、ゲル化剤(塗布剤)、ゲルチューブ剤(塗布用)、水溶液剤、フィールド剤(アルコール製剤)、ポピドンヨード含浸綿製品など、幅広く商品が展開されており、使用頻度の高さが伺える。
[編集] 副作用
比較的安全な外用消毒剤ということもあり、特筆すべき副作用はあまりない。 ただし、甲状腺機能障害の患者に長期大量に使用すると、(甲状腺はヨウ素を必要とする器官であるため)血中のヨウ素濃度が上昇する事があり、慎重な観察と投与が必要とされている。
また、幼児・妊産婦に対する使用は慎重に行う必要がある。
[編集] その他注意事項
ポピドンヨード液は、電気的な絶縁性を持つため、電気メスを使用する際は、対極板との間にポピドンヨード液が入らないよう注意をする必要がある。
また、稀にではあるが、皮膚に使用した際に、色素沈着を起こすことがある。
眼に使用する際は、希釈液を用いる事が推奨されている。