モトクロッサー
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モトクロッサーはモトクロスレースのために作られた競技用オートバイの一種。
[編集] 概要
この車両は未舗装路の走行を目的としており、凹凸の激しい低摩擦面を走行するための工夫がなされており、跳ね上がる泥を避けるための大きな泥除けが見られ、また軽量・高速・高トルク重視である。
サスペンションは激しい凹凸に対応して長いストローク(可動範囲)が設定されているが、これは乗り心地を考慮した物ではなく、あくまでも地面との接地性やジャンプして着地する際に車体が分解しないようにするためのものである。タイヤも不整地でのグリップ力が良い・大きなブロック状の突起がついた専用のオフロードタイヤが取り付けられている。常に転倒する事があるため、また長時間の走行は前提とされていないので燃料タンクはそれほど大きな物は積まれない。(5〜10リッター程度)
モトクロス競技では、軽量で機敏な車体が大きく跳ねたり、転倒・クラッシュは最初から起きる物とされる激しさもあり、他のモータースポーツには無い魅力があるため、世界各国でこのオートバイ車種の販売が見られる。ただし現在は日本国内4メーカーの車両の販売が大半を占めている。
なお軽量化のため保安部品(前照灯、ウィンカー、警笛、バックミラー等)は元々無いか外されているのでナンバープレートを取得すること出来ない。そのため公道の走行は不可能で原則として四輪のトランスポーターに積載して走行可能な場所まで運ぶことが前提であるが、草レース等の市民参加型レースの盛んな地域では、会場までこの車両に乗って来る人のために脱着可能な保守部品の用意された車両もある。ただ、オフロードタイヤは舗装面での長距離高速走行には向いておらず、そのような場所で走行すると柔らかいブロック状の突起が摩擦熱で更に柔らかくなって脱落してしまう場合も見られる。 (なお、逆輸入車の場合、通関証明の提示や保安基準部品を装着することでナンバー登録ができる場合もある。)
エンジンは20年以上前は軽量化のために排気容積の然程大きくない空冷式2ストロークエンジン・単気筒の物がほとんどで、2ストロークエンジンの常として引き込み効果を得るためにエンジン部分に程近い所で大きく脹らんだチャンバー(膨張室)と出口にサイレンサー(消音機)が取り付けられているが、本来のサイレンサーに求められる消音性能はレース車の常として求められず、非常に排気音が大きく、独特の甲高い連続した破裂音を立てるものであった。更なる性能向上にエンジンの水冷化、アルミフレームへの変更などが行われたが、しかし、環境意識の高まりとともにレース専用のオートバイにおいてすらも、2ストロークエンジンの構造に由来する未燃ガスや潤滑用オイルの大気中への排出や騒音が問題視され、効率の良いサイレンサー(排気の消音装置)の装備、小型・軽量な4ストロークエンジンの開発/採用が進み、最近(2005年現在)では4ストロークエンジンの車両の方が販売台数が増えている。
[編集] 類似車種
似た用途のものでは更に軽量化を施して、エンジン出力にモノをいわせた走破よりも搭乗者の運転操作技術を主に競うトライアル競技に用いるためのトライアラーがある一方、耐久レースにおいて長距離をひたすら走る(場合によっては公道も走破する)エンデューロレース用の公道走行が可能なエンデューロマシンや、公道走破を重視して不整地でも舗装地でも高速で走破できるデュアルパーパスマシンがある。
特にエンデューロマシンやデュアルパーパスマシンの場合は、公道走行も可能なように保守部品が取り付けられている事から、一般の人が公道で乗る用途にも利用できるため市販されており、人によってはこちらを含めてモトクロッサーと呼ぶ場合がある。
なおエンデューロマシンはモトクロッサーに保守部品を取り付け、乗り心地も良くなるようサスペンションが柔らか目にセッティングされてはいるが燃料タンク以外ではモトクロッサーと同じ設計思想に基いている。ただエンジンは耐久力を重視して、近年では軽量化の進んだ4サイクル油冷エンジンや水冷化されたものも普及する傾向が見られる。排気量は余り大きくない物が多い。
デュアルパーパスマシンではヨーロッパなどで盛んに開催されるラリーを意識しており、特に整地走破性を重視して、不整地走破性がやや犠牲となっているが、大容量の燃料タンクが積まれている・大排気量の4サイクル水冷エンジンを搭載したり、タイヤが損耗の激しいオフロードタイヤではなく専用の溝の深い舗装道路走行を意識したタイヤが用いられるといった具合で、特に一般車両として市販されている事から、ツーリング用にと熱心に愛好するライダーも多く存在する。