モナド
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モナドとは
- ライプニッツが著書『モナドロジー』において提唱した哲学上の概念。本稿で詳述。
- 数学の超準解析において、ある与えられた超実数に対して無限に近い全ての超実数の集合。
- 数学の圏論において、ある特別な性質を持った自己関手。任意の随伴関手から、その対を合成することで常にモナドが得られる。これは哲学のモナドとは関係なく、名称は「モノイド」(monoid)と「トライアド」(triad)の組み合わせから来ている。モナド (圏論)を参照。
- プログラミング言語、特に(純粋)関数型言語において、参照透過性を保ちながら状態や副作用などを扱うための枠組みの1つ。圏論におけるモナドに由来。モナド (プログラミング)を参照。
モナドはライプニッツの案出した存在を説明するための概念である。ギリシア語モナス(個、単一)に由来する。単子と翻訳される場合もある。
これ以上分割できない究極の個体という原子論的側面だけでなく、可能的な述語をすべてその概念に含むものとしての主語と言う論理学的な側面、精神の神学的・形而上学的なモデルという側面を併せ持つ。
- 現実に存在するものをそれを構成しているものへと分析していくといつかはそれ以上分割できない(部分を持たない)実体に到達しなければならない。これがモナドである。
- ライプニッツによればモナドは構成されたものではなく、部分を持たない、厳密に単純な実体であるが、にもかかわらず属性として状態を持つ。属性を持たなければすべてのモナドは区別できず、複数のモナドがあるとはいえなくなるからである。(不可識別者同一)
- このとき或る状態から別の状態への変化の傾向性を欲求という。
- この「状態」は他のすべてのモナドの状態を反映する。すなわち、究極的には無数のモナドから、そしてただそれだけからなる現実世界全体の状態(ということはすべてのモナドの状態)に、個別のモナドの「状態」は対応する。これがモナドの持つ「表象・知覚」能力である。(モナドは鏡である)
- しかしモナドは部分を持たない厳密に単純な実体であるから、複合的なもの同士が関係するような意味で「関係」することはできず、厳密に相互に独立している。(モナドには窓がない)
- したがってこの表象能力、他のモナドの状態との対応は、モナドの定義からいって不可能であるところの外的な「相互関係」によるものではなく、ちょうど、あらかじめ時刻を合わせた二つの時計のような意味での、神の創造の時点であらかじめ予定・調整された「調和」である。モナドの状態の変化は厳密にそのモナドの先行状態にのみ由来する。(予定調和)
- この表象能力には、その対応の正確さや明晰さに応じて、明晰・混雑などの度合いの差がある。すべての他の事物や世界の状態が同等に知覚・表象されるわけではない。対応するものを明晰に反映していない表象は、しかし雑然とした形で意識の状態に影響を与える。これを微小表象といい、後にいう無意識の概念に近い。たとえば眠っているときの意識は、身体や外界の状態に曖昧かつ不明瞭に対応する微小表象によって構成されている。
- 人間や動物の精神や生命は、このモナドの表象・知覚の能力によって説明される。逆に言えば、そこから、すべてのものにはそれぞれの度合いに応じて精神や生命があるということにもなる。
[編集] モナドは窓を持たない
一般にモナドロジーは因果関係を否定したものと受け取られることが多い。しかしライプニッツが「窓がない」という言い方で主張しているのは、因果関係に関する特定の、当時支配的だった考え方なのである。
物が物に作用するというとき、ひとつのありうるモデル、描像としては、作用するモナドから何かが出て、作用されるモナドの中へ入るという構図が考えられる。たとえば通信のモデルで、伝達を、メッセージが一方から出て他方へ入ると理解するように、力の作用も、押すモナドから「力」が出て押されるモナドに「力」が入ることで、押されるモナドの内部の構成が変化する、これが因果関係であるというようなモデルである。
これに対してライプニッツは、たしかに複合的な粗大な通常の物体では、そういう何か媒介物の移動で作用を説明することができる場合もあるけれども、つきつめれば、モナドは部分や構成要素を持たないのだから、「外から何かが中に入る」ことはありえず、因果関係や作用は「外的な対応する変化」であって、「内的な何かのやり取り」としては理解できない、と主張しているのである。
したがって、その限りではライプニッツは決してとっぴな主張をしているとはいえない。
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