不動産証券化
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不動産証券化(ふどうさんしょうけんか) 資産証券化のうち、とくに不動産資産を対象にしたものを不動産証券化あるいは不動産の証券化という。不動産証券化に共通した特徴は、不動産を投資対象に組み込んで、広く投資家に小口化した商品にして売却する仕組みということになる。不動産流動化商品という言い方もある。このような仕掛けとしては、投資信託、金銭信託、匿名組合、特別目的会社などがある。低金利が続いた中での高利回り商品として、多くの資金を集めた反面、投資家保護が不十分との指摘もある。
- 不動産投資信託(REIT real estate investment trust) オフィスビルや住宅、商業施設などのの保有物件からの賃貸収入・売却収入を小口に分配する仕組みである。配当可能利益の90%超を投資家に分配し、かつ3人以下の投資家の保有が決算期末に50%を超えない場合は、分配にあてる所得を損金算入できる。わが国では2001年に登場し、低金利で投資対象に困っていた地銀などが積極的に購入して規模が拡大した。2006年現在の購入の主体は銀行、投資信託、外国人などである。2006年末で利回りは高いものは2-3% 低いものは6-7%、中心は2%台から4%台となっている。なお投資指標として注目される東証REIT指数は、2003年4月に算出が開始された。
- 商業用不動産ローン担保証券(CMBS commercial mortgage backed securities) 商業用不動産ローンをまとめて証券化したもの
- 私募ファンド 不動産を購入するものも多いが、REITなど不動産流動化商品を購入するものもある。
- ファンド間の不動産取得競争で不動産価格が上昇すると収益率が低下することが問題になっている。確実に物件を確保でき完成後取得するよりも収益率が高い建物完成前に不動産を取得する「開発型」が増えているとされる。
- 設立の母体が不動産会社や金融機関のケースでは、保有している不動産の流動化にこの仕掛けを活用しているが、不動産を取得するときの価格評価が適切になされているか疑問が出されており審査体制に投資家保護の観点から課題があるとの指摘がある。
- 投資指標としては、REIT指数、REITの利回り率が使われる。また不動産需給が参考指標とされ、オフィスについては空き室率、賃料の改定率(改定後上昇率)、平均賃料。マンションについては、販売戸数、販売単価。などが不動産の需給動向をみるのに使われる。
[編集] 文献
- 福光寛「新たな段階に入った日本の資産証券化」『成城大学経済研究』145, 1999.
- 湯野勉「不動産の証券化・再論」『龍谷大学経済学論集』40(3・4), 2001
- 今野浩之「不動産の証券化とSPC法改正の意義」『不動産流動化研究』8, 2002.
- 国土交通省ほか『基礎からよくわかる不動産証券化ガイドブック』ぎょうせい, 2004.
- 国土交通省ほか『開発型不動産証券化の知識と実務』ぎょうせい, 2004.
- 久郷幸夫「経営戦略として定着しつつある不動産証券化」『M&A Review』19(3), 2005.
- 田辺信之『不動産証券化入門』住宅新報社, 2006.
- 無署名「金融庁連続処分が物語る不動産証券化における信託制度の理想と現実」『金融財政事情』2694, May 15, 2006.
- 長谷川信栄「不動産証券化の現状と課題」『住宅金融月報』653, June 2006.
- 黒瀬英理奈「不動産証券化と不動産の鑑定評価」『住宅金融月報』656, Sept.2006.
- 無署名「金融庁の不動産関連投融資注視で市場に異変」『金融財政事情』2732, Mar.5, 2007.