中全音律
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中全音律(ちゅうぜんおんりつ)は、西洋音楽の音律のひとつ。ミーントーンとも呼ばれる。
1523年にピエトロ・アーロンが発表したものが有名でこれをアーロンの中全音律とよぶ。ヘンデルも愛用した。
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[編集] 歴史
14世紀中頃から三和音を多用した曲が多く作曲され、3度と5度の両方を純正にとる純正律が一時期流行した。しかし転調が出来ないため、5度よりも3度を純正にとる音律の研究が盛んになった。したがってアーロン以前にヨーロッパの広範囲で鍵盤楽器にこの音律が用いられていた可能性がある。この音律はのちにミヒャエル・プレトリウスらによって改良され数種のヴァリエーションが出来た。ウェル・テンペラメントや17世紀後半以降のヴェルサイユ宮廷で愛用されたオーディナリー・テンペラメントは理論の項目で述べるような欠点を補った音律である。
[編集] 理論
5度を重ね合わせて12音を作る際に、5度の周波数比を、ピタゴラス音律のような純正な5度(周波数比 1.5)ではなく純正よりもわずかに狭くして周波数比1.49535とすることにより、5度を4回重ね合わせてできる長3度の音程の周波数比が
- 1.495354 / 4 = 1.25 ( 4:5 )
のように純正になるようにした音律。
長3度の音程が純正で完全に澄んだ響きであり、5度も純正からの誤差は半音の1/20ほどなので、比較的美しく響く。そのため、長調の主和音は美しく響くので、和音を重視した音楽を美しく演奏する事ができる。
しかし、この5度を11回重ねて作った12音の最初と最後の音の間の5度は、半音の2/5程度のずれがあり、非常に濁った響きになる。また、その濁った5度を含んだ4つの5度を重ねて出来た長3度も同様に濁った響きになる。これらの濁った響きは実用にならないため、濁った音程を使用する事がないように、演奏する曲の調性に応じて、調律を変更する必要がある。また、作曲の際、中全音律を用いて演奏することを想定する場合は、濁った音程を使わないように注意を払う。そうすることで中全音律の利点を活かすことができる。
[編集] 調律法
以下ハープシコードやスピネットを例に代表的なアーロンの中全音律(1/4シントニックコンマ)の調律手順を記述する。
まず、ミーントーン5度を作りそれをもとにして純正長3度を作るという流れになる。
- ミーントーン5度
- 純正長3度
- まず、aからa'のオクターブをゼロビートに合わせる。
- g'からb'とeb'を長3度ゼロービートに合わせる。
- d'からf#'とbbを長3度ゼロビートに合わせる。
- a'からc#"とf'を長3度ゼロビートに合わせる。
- e'からg#'を長3度ゼロビートに合わせる。
- b'からb、bbからbb'、c#"からc#'のオクターブをゼロビートに合わせる。
- 三和音g b d'、a c#'e'、bb d'f'、d'f#'a'、eb'g'bb'、e'g#'b'、f'a'c"に問題がないかを確認する。
- 仕上げ
- 出来上がった中央のオクターブ12音を基準に鍵盤の両側全域へオクターブゼロビートに合わせる。
- 全音域の三和音に問題がないか確認する。
[編集] 外部リンク
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