二恨坊の火
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二恨坊の火(にこんぼうのひ)は、日本の摂津国二階堂村(現・大阪府茨木市二階堂)に伝わる火の妖怪。仁光坊の火とも表記される。
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[編集] 概要
3月から7月頃までの時期、特に曇った夜に出没したとされる。大きさは30センチメートルほどで、火の中に人の顔のように目、鼻、口のようなものがある。鳥のように空を飛び回り、家の棟や木にとまる。人間に対して特に危害を加えることはなく、近くに人がいると逆に飛び去ってしまう。
[編集] 伝承1
かつて二階堂村に日光坊という名の山伏がおり、病気を治す力があると評判だった。噂を聞いた村長が自分の妻の治療を依頼し、日光坊は祈祷によって病気を治した。ところが村長はそれを感謝するどころか、日光坊と妻が密通したと思い込み、日光坊を殺してしまった。日光坊の怨みは怨霊の火となって夜な夜な村長の家に現れ、遂には村長をとり殺してしまった。この「日光坊の火」が、やがて「二恨坊の火」と呼ばれるようになった。
寛政時代の雑書『諸国里人談』で語られている。
[編集] 伝承2
二階堂村に山伏がおり、一生の内に二つの怨みを抱いていたために二恨坊と仇名されていた。彼は死んだ後に魔道に堕ちたが、その邪心は火の玉となって現世に現れ、「二恨坊の火」と呼ばれるようになった。
江戸時代の書物『本朝故事因縁集』で語られている。
[編集] 伝承3
かつて仁光坊という美しい僧侶がいたが、代官の女房の策略によって殺害された、以来、仁光坊の怨みの念が火の玉となって出没し、「仁光坊の火」と呼ばれるようになった。
江戸時代の怪談本『百物語評判』『宿直草』で語られている。
[編集] 関連項目
[編集] 出典元
- 村上健司 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、252頁。
- 水木しげる 『妖鬼化 3 近畿編』 Softgarage、2004年、101頁。