他社株転換社債
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他社株転換社債(たしゃかぶてんかんしゃさい)とは、仕組債の一種で、償還時に指定された特定の株の価格によって償還条件が変わる債券で、EB債(Exchangeable Bond)と呼ばれている。
一般的に、自社の社債と他社株に対するプットの売りを組み合わせた金融商品で、償還時に他社株の株価が一定の水準(プットオプションの行使価格)より上回っていた場合には、通常の社債より高い金利が得られる一方、株価が水準を下回った場合には元本が対象株式に転換されて償還となる。
これは、プットオプションのオプション料が金利に上乗せされる結果、高金利が得られるが、対象銘柄の株価が行使価格より低くなった場合にオプションが行使されるためである。
通常の転換社債は転換の行使権は債券の所有者が有するのに対して、他社株転換社債では発行者側がこれを有することになる。
[編集] 商品や販売における問題点
株価が下落した場合はその損失を負う事になるため、価格変動リスクは株式と同じかやや低いくらい高いといえる。一方で、収益は最大でも利息分にとどまり、株価が上昇した分の利益は得る事が出来ない。
日本では、ITバブル時代に証券会社が大々的に販売したが、バブルの崩壊で株価が急落し多額の損失を抱えた者が多発、更には証券会社が株価を操縦し、購入者の不利益となる行動を行っていたことも発覚し、社会問題と化した。違反行為を行っていた販売者には、行政処分が下されている。証券会社の中には、「東証一部に上場しているのだから、株式償還されてもいずれは株価は戻る」と説明をし、販売を行っていた所もあるとされる。
なお、実際にはオプションの価格に見合う利益を購入者が得られない、すなわち高コストの商品であるとの指摘もある。実際、10~15%程度の手数料を販売者は取っていたと見られている。
類似商品として、日経平均株価などの株価指標に応じて返還価格が変動(下落すれば元本割れもあり得る)する、リンク債も販売されていた。
[編集] 英語での呼称について
Exchangeable Bondという呼称については注意が必要である。欧米ではExchangeable Bondという場合、「債券の所有者が株式への転換権を有するが、転換対象の株式が債券の発行体と異なるもの」を指すことが通常であり、持ち合い株式比率の軽減や、子会社の市場価値を利用した資金調達などに広く用いられる。一方、上記日本でいうところのEB債はReverse Convertible Bondという。