六価クロム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
六価クロム(ろっか - )は、Cr6+ を含む化合物の総称。
目次 |
[編集] 概要
金属クロム(Cr 単体)自身は無害であり、食器などのめっきはたいていクロムめっきが使われている。しかし、酸化されて三価や六価のイオンとなると毒性を持つようになる。自然界に存在するクロムはほとんどが三価で毒性はそれほど高くはない。
六価のクロムは人工的に生成される。この六価クロムが皮膚につくと皮膚炎や腫瘍の原因になるだけでなく、発ガン性の疑いもあるとされる。六価クロムは気化しやすいため、消化器官や肺・皮膚などからたやすく吸収される。
代表的な六価クロムとしては三酸化クロム (CrO3) や二クロム酸カリウム (K2Cr2O7) があり、酸化剤やめっき等に用いられる。また、六価クロムのうちクロム酸塩(CrO42-イオンを含む化合物)は黄色のものが多く、水に可溶なものとしてはクロム酸カリウム (K2CrO4) 等がある。また、水に不溶なクロム酸塩は黄色の顔料として使われる。クロム酸塩の黄色顔料でよく使われるものとしては黄鉛(クロム酸鉛、PbCrO4)、ジンククロメート(クロム酸亜鉛、ZnCrO4)、ストロンチウムクロメート(クロム酸ストロンチウム、SrCrO4)がある。
還元剤により還元されると、三価のイオンとなる。
[編集] 歴史
日本では、地盤強化剤という名目で、クロム鉱さい(スラグ)を埋め立てることが奨励され、沖積低地で軟弱地盤である東京の下町地域(江東区など)に、広域に渡って埋め立てられていた。クロム鉱さいによる土壌汚染・地下水汚染は現在でも発生している。
1973年(昭和48年)に地下鉄工事における調査で、都営地下鉄新宿線大島車両検修場用地として東京都交通局が日本化学工業から買収した工場跡地から大量の六価クロムの鉱滓が発見され、土壌汚染問題として全国に知られることとなった。
2006年(平成18年)に火葬場から出る火葬灰から、有害物質の六価クロムが最大で国の基準の420倍検出されたことが、火葬場の調査研究を行うNPO法人・日本環境斎苑協会(川崎市)の調べでわかった。火葬炉内でひつぎを載せるステンレス製台に加工されているクロムが原因とみられる。
[編集] 人体への影響
接触すると皮膚炎、潰瘍を起こす。特徴的な上気道炎の症状として、クロム酸工場の労働者に鼻中隔穿孔が多発したことが知られている。体内に入ると、肝臓障害、貧血、肺癌などになる。
[編集] 補足
クロムは人にとって必須の元素であるが、サプリメント等に含まれているものはピコリン酸クロムが多く、これは三価のクロムである。
[編集] 関連項目
カテゴリ: 無機化合物 | クロムの化合物 | 自然科学関連のスタブ項目