兵馬俑
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兵馬俑(へいばよう)は、本来は古代中国で死者を埋葬する際に副葬された俑のうち、兵士及び馬をかたどったものを指す。秦九代目の王穆公が死去した際に177名の家臣たちが殉死することになり、殉死を防ぐために兵馬俑が作られることになった。現在では、秦の始皇帝の陵墓の周辺に埋納されたもののみをさすことが多い。ここでは、世界的に著名な始皇帝のそれについて記す。秦の始皇帝陵の一部として1987年、世界遺産(文化遺産)に登録されている。
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[編集] 発掘以前
史記や漢書など数々の歴史書には秦の始皇帝陵の存在は記されていたが、数々の動乱などにより所在地や存在そのものが忘れ去られていた。ちなみに漢書によると、秦の始皇帝陵は項羽によって破壊されたと記されている。
始皇帝の兵馬俑が発掘されて、世界を驚かせたのは1974年のことであるが、この地域の住民の話を総合すると、以前から水を枯らす化け物等として、その存在は薄々知られていたようである。
本格的に発掘されるようになったのは、畑を営んでいた住人が井戸を掘ろうとして見つけたのがきっかけだった。 ちなみにその当人は現在、博物館の名誉副館長である。
[編集] 発掘と調査
この大文物群が発掘され調査が行われると、人々を驚かせるような結果が次々に明らかとなった。
例えば、これらの兵士の俑にはどれ一つとして同じ顔をしたものはないことや、秦の軍隊がさまざまな民族の混成部隊であったこと及びかつての秦の敵国が存在した東方を向いて置かれていたこと等である。
また、この文物により、当時の秦軍の装備や編成等、これまでは文献史料のみでしか伝えられていなかったものが、こうして実物大のものとして現代に生きる我々の目の前に登場したことは非常に大きい意義がある。
[編集] 現在も続く調査・研究
21世紀に入った現在でも、この大文物群の調査・研究は続いている。近年の現地の研究者や日本の研究者の調査報告によると、従来、来世へと旅立った始皇帝を守るべく配された軍隊と思われていたこの大文物群は、それだけでなく、生前の始皇帝の生活そのものを来世に持って行こうとしたものであったようだ。すなわち、兵馬のみならず宮殿の実物大のレプリカや、文官や芸人等の傭も発掘されたのである。これらの新発見については、朝日新聞に掲載された杉本憲司のコラムに詳しく書かれている。 2006年には、日本で初めて彩色の残る兵士俑が公開された。同年6月28日の新華社電によると最近では兵馬俑の眠る始皇帝陵の陪葬墓から出土した人骨がペルシャ系のDNAと同じ特徴を持つ男性の骨と分かった。
[編集] エピソード
2006年9月16日に、兵馬俑の一兵士に扮したドイツ人美術学生が敷地内に侵入するという事件が発生した。だが、侵入して5分後に警察官に捕まり兵馬俑の服装を没収され解放された。
[編集] 関連映画
- 程小東(チン・シウトン)監督映画『テラコッタウォリア / 秦俑』
- 中国・香港合作作品、1989年。香港のアクション監督・程小東が張藝謀と鞏俐を主演に起用した映画。張藝謀の扮する将軍(秦始皇帝の側近)が、鞏俐の扮する美女との恋愛で皇帝の怒りにふれ、兵馬俑に生きながら埋葬されるに至る冒険活劇と、三千年後二人とも同じ時代に転生して悲恋コメディーとなる大作映画。[1]
[編集] 関連項目
[編集] 文献
- 今泉恂之介『兵馬俑と始皇帝』新潮社、1995年11月、ISBN 4106004879
- 陜西始皇陵秦俑坑考古発掘隊、秦始皇兵馬俑博物館(共編)『秦始皇陵兵馬俑』平凡社、1983年9月、[2]
- 滝口鉄夫『中国兵馬俑への旅 カメラ紀行』北海道新聞社、1996年8月、ISBN 4893631152
- 鶴間和幸『始皇帝陵と兵馬俑』講談社、2004年5月、ISBN 406159656X
[編集] 外部リンク
- 人民日報 日本語版: 秦の始皇帝陵と兵馬俑
- AllChinaNet.com - Travel guide: Terra Cotta Warriors, Terracotta Army(英語)
- AsianArtMall.com: Qin Dynasty Terracotta Warriors(英語)
- Charles Billich (Billich.info): Terra Cotta Warriors - Bing Mah Yong(英語)
- TerracottaWarriors.org(英語)
- UNESCO World Heritage Centre: Mausoleum of the First Qin Emperor(英語)
- World-Heritage-Tour.org: Terracotta : Army(英語。ドラッグで移動、シフトキーでズームイン、コントロールキーでズームアウト。要quicktime)
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