割引現在価値
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割引現在価値(わりびきげんざいかち)とは異時点間における貨幣価値の差をなくして比較するために用いる考え方である。
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[編集] 概要
歴史を学ぶ際、書物やテレビ番組などで、「現在の価値に換算すると」という言い回しを耳にするが、これは「大正時代の10円と現在の10円とでは価値が異なる」などのため、現在の感覚で物事を捉えるために、過去の貨幣価値を現在のものに置き換える必要があるためである。 同様に、将来の貨幣価値も現在のそれとは異なる。即ち、10年後の1万円は現在の1万円と等価ではない。従って将来のキャッシュフローを評価する際には、単純に加算するのではなく、現在の価値に換算して考える必要がある。 例えば、金利が1%の債券に、今年10000円投資した場合、来年は価値が10100円に増える。一方で、1年後に10000円が支払われる約束がしてある債券の今時点における価値は、約9901円になる。この9901円が、この債券の割引現在価値である。また、金利1%が10年続くとすれば、10年後の10000円の割引現在価値は、1.01を10乗した1.1046で10000円を除した9053円となる。即ち、以下の計算式が適用される。
割引現在価値=将来価値/利回り^期数
このようにして、異時点間の価値を比較することが可能である。
[編集] 割引率
割引現在価値を計算する際に使用する利回りのことを割引率という。割引率の設定の際には以下のような要素に留意する必要がある。
[編集] 金利
現在の価値が将来の価値より割り引かれる理由の一つは、金銭には時間的価値があるためである。従って、この時間的価値の指標である金利を割引率に加える必要がある。金利については、無リスク状態での率をあらわすリスクフリーレートなどを参考に設定する。
[編集] 物価
物価が上昇すると、貨幣の額面が同じであっても価値は下落する。このためインフレ率などを割引率に加える必要がある。
[編集] リスク
例えば債券については、高リスクのものであれば利回りが高くなる。これは将来の不確実性が利回りに織り込まれるためである。一般的に、リスクの高い事業のキャッシュフローを割引現在価値で評価する際には、リスクの低い事業よりも大きい割引率を用いることになる。