反射高速電子線回折
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反射高速電子線回折(はんしゃこうそくでんしせんかいせつ)とは、Reflection High Energy Electron Diffractionの略でRHEED(あーるひーど)*とも言い、物質の表面状態を調べる技術の一つである。
*英語圏では「リード」と発音されている。「アールヒード」という読み方は、RとLの発音を区別することを苦手とする日本人が、LEEDと区別するために使い出した読み方である。
真空中で電子銃により電子を加速し、加速した電子を試料表面にごく薄い角度で入射させる。電子線は試料表面で反射して、蛍光スクリーンに達し、像を結ぶ。電子線の波長は加速電圧E=25kVのとき、λ=0.0077nmと非常に短いため、原子単位での表面状態が像に影響する。電子線は蒸着の過程に影響しないため、分子線エピタキシー法などにおける成長中の表面構造のその場(in-situ)観察にも用いられる。
試料表面がアモルファス状になり、結晶方位が揃っていないときはRHEED像はリング状のパターンになる。逆にエピタキシャル成長により試料表面の格子面方位が揃っているときは、回折によりパターンが変わる。表面が平坦であれば、回折は面内方向にしか発生しないため、ストリーク状のパターンが現れる。逆に表面に原子層単位でも凹凸があれば、面直方向にも回折が発生するためドット状のパターンが現れる。
ストリークやドットパターンの間隔は格子定数に影響されるので、RHEEDのパターンから表面の格子の状態を推定することもできる。