呼吸困難
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医学における呼吸困難(こきゅうこんなん, dyspnea)は、臨床症状のひとつ。呼吸するという生理的運動に際して、苦しさや努力感を感じる状態。息切れ(いきぎれ, breathlessness, shortness of breath, SOB)と同義。
呼吸は体に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するという血液中のガス交換を目的として行われる生理的運動であるが、医学的には呼吸困難という状態はあくまで自覚的な症状を指し、必ずしも呼吸機能に問題があるとは限らない。従って敢えて呼吸困難感(こきゅうこんなんかん)という用語を使う必要はないが、明確にするためにこのように使われることもある。
呼吸が障害され、本来の機能である血液中のガス交換がうまく行われていない状態のことは「呼吸不全」と呼んで区別し、これは客観的な検査によって判定する。
つまり、意識がない人には「呼吸困難」はなく、「呼吸困難」があっても「呼吸不全」がない場合や「呼吸困難」がなくても「呼吸不全」があるという場合も存在する。特に老人や、慢性の肺疾患を持っている者のなかには、呼吸不全があっても呼吸困難をきたしていないものがおり、注意を要する。
なお、一般的な用語としての呼吸困難と呼吸不全は、混同されて使用される場合も多い。
[編集] 呼吸困難をきたす疾患
呼吸困難は数多くの疾患で起きる非特異的な症状である。原因となる疾患のうち、代表的なものは以下の通り。
肺そのものの病変以外にも、周辺臓器、特に心臓の機能不全で呼吸困難が生じることがあることに注意。
[編集] ヒュー・ジョーンズ分類
呼吸困難の程度を客観的に表現する試みとして最も利用されているものに、ヒュー・ジョーンズ分類(Hugh-Jones分類)がある。心不全からくる呼吸困難に対してはNYHA分類が使われる。
- I度
- 同年代の健常者と同様の生活・仕事ができ、階段も健康者なみにのぼれる
- II度
- 歩行は同年代の健康者なみにできるが、階段の上り下りは健康者なみにできない
- III度
- 健康者なみに歩けないが、自分のペースで1km(または1マイル)程度の歩行が可能
- IV度
- 休みながらでなければ50m以上の歩行が不可能
- V度
- 会話や着物の着脱で息がきれ、外出ができない