商法総則
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商法総則(しょうほうそうそく)とは、形式的には商法(明治32年法律第48号)第一編「総則」を指し、8章32ヶ条からなる。同編に関する解釈を扱う商法学の分野の名でもある。
総則とは、ある法律においてその全体に通じる規定を言い、商法のほかにも民法や刑法などにも存在するが、商法総則に関しては、商法典における総則としての役割を果たしている条文は僅かである。
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[編集] 構成
商法総則には、以下の規定がおかれている。
- 第1章「通則」(1条〜3条)
- 第2章「商人」(4条〜7条)
- 第3章「商業登記」(8条〜10条)
- 第4章「商号」(11条〜18条)
- 第5章「商業帳簿」(19条)
- 第6章「商業使用人」(20条〜26条)
- 第7章「代理商」(27条〜31条)
- 第8章「雑則」(32条、形式的には500条までであるが、33条から500条までは会社法制定に伴う改正により削除された条文である。)
[編集] 問題点
[編集] 商法総則の地位
商法総則のうち、第1章「通則」は、商法の適用関係を一般的に定めた規定をまとめたものであり、第8章「雑則」は、署名に代わる記名押印の扱いに関する規定(もともと商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律で規律されていたもの)である。これらの規定がいずれも総則性を有することは問題はない。また、第2章のうち第4条は、商法の適用範囲を画する概念の一つである商人を定義したものであり、これも総則性を有する。
しかし、その他の規定については、総則性が疑われている。その原因としては、一般法としての実質が貧弱であること、各規定の立法趣旨がまちまちであるために統一的な理念を抽出することができないことが考えられる。
[編集] 会社に対する適用
会社の登記、商号、会計帳簿、使用人などについては会社法で規律されるため、前述した規定を除き、会社に対しては商法総則の規定は直接適用されない。また、非営利法人が商人の地位を有する場合には、商法総則の適用可能性がないわけではないが、法人設立の根拠法令等により適用が除外される場合がある(例:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律9条など)。このため、ほとんどの場合個人商人に適用されることが想定されている。
これは、会社法制定に伴う改正前の商法総則(ただし第2章以下)は、性質上会社には適用されない規定を除き、個人商人であると会社であると問わず適用される商人の組織やそれに密接に関連する規定をまとめたものであったが、会社法の制定により、会社の組織に関する事項は会社法で規律されることになったことによる。
また、会社法制定前の商法総則に関して言えば、第2章「商人」の規定は、改正前の第2編「会社」の規定と並び企業形態に関する一般法と言うべきところ、両者の差は歴然であった。
[編集] 不正競争防止の観点
他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止について規定した商法12条の規定は、不正競争防止の観点が折り込まれている。つまり、商法の総則として位置づけが希薄であり、むしろ不正競争防止法に取り込まれるべきものである。
[編集] 商行為法との関係
商法総則は、総則と言いながらもほとんどが商人の組織(しかも会社は対象外)に関する総則としての意味しかなく、商取引に関する総則的な規定は、第2編「商行為」第1章「総則」に存在しており、この点からも総則性が希薄であると言える。