多項式時間変換
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
多項式時間変換(たこうしきじかんへんかん、polynomial-time reduction)は計算複雑性理論の一概念である。多項式時間帰着(たこうしきじかんきちゃく)、多項式時間還元(たこうしきじかんかんげん)ともいう。「時間」を省略して多項式変換と表記することもある。
[編集] 概要
ある問題 A の各問題例を別の問題 B の問題例に多項式時間で変換できるとき、「A は B に多項式時間変換可能である」という。 ただしここでの変換は A の入力の内容に依存しないこととする、つまり A という問題に対する全ての問題のパターンが B に変換できなければいけない。
この概念は計算理論において問題の「難しさ」の度合いとしてよく使われる。 すなわち、A が B に多項式時間変換可能なら A を解くアルゴリズムがあってもそれ用いて B を解くことができるか分からないが、 B を解くアルゴリズムがあれば、その変換を用いれば A は自動的に解ける。つまり B は A と同等かそれより難しいと結論することができるからである。
また完全性の証明にもよく使われる、例えばNP完全問題は NP完全であることの証明はスティーブン・クックによって充足可能性問題のみに行われた。それ以外の NP完全問題は
- NP完全問題に属する問題 A は別の NPに属する問題 B に対して多項式時間変換可能であると分かった。
- つまり B は A と同等かそれより難しい。
- ところが NP完全問題とは NP に属する問題の中で一番難しい問題である。
- つまり A より難しい NPに属する問題は存在しない。
- よって B は A と同等すなわち B も NP完全問題である。
という論法で証明されている。