対人距離
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対人距離 (interpersonal distance) とは、人間がもっている他人との距離に関する意識のことをいう。
[編集] ホールの定義
E. T. ホール (Hall)[1] は動物と人間との観察にもとづいて人間がつぎのような対人距離に関する意識をもっていると主張している。
- 密接距離 (intimate distance) - 15 ~ 45 cm。愛撫、格闘、慰め、保護の意識をもつ距離。
- 個人的距離 (personal space) - 45 cm ~ 1.2 m。相手の気持ちを察しながら、個人的関心や関係を話し合うことができる距離。
- 社会的距離 (social distance) - 1.2 m ~ 3.6 m。秘書や応接係が客と応対する距離、あるいは、人前でも自分の仕事に集中できる距離。
- 公衆距離 (public distance) - 3.6 m 以上。公演会の場合など、公衆との間にとる距離。
各距離はさらに近接層と遠隔層とにわけられ、あわせて 8 とおりの分類がなされている。 具体的な距離範囲は民族や動物の種類などによってことなるが、距離が 4 とおりまたは 8 とおりに分類できることは共通しているという。
[編集] 西出の定義
西出[2]は対人距離をつぎのように分類している (松原ら[3]から引用)。
- 排他域 - 50 cm 以下。絶対的に他人を入れたくない範囲で、会話などはこんなに近づいては行わない。
- 会話域 - 50 cm ~ 1.5 m。日常の会話が行われる距離である。 このゾーンに入ると会話することが強制的であるような距離圧力を受ける。すなわち会話なしではいられない。もし会話がないときは何らかの「居ること」の理由を必要とする。
- 近接域 - 1.5 ~ 3 m。普通、会話をするためにこのゾーンに入るが、会話をしないでこのゾーンに居続けることも不可能ではない。距離圧力としては微妙なゾーンであり、しばらく会話なしでいると居心地が悪くなる距離である。
- 相互認識域 - 3 ~ 20 m。このゾーンでは、知り合いであるかどうかが分かり、相手の顔の表情も分かる。普通、挨拶が発生する距離である。特に、3 ~ 7 m の距離では、知り合いを無視することはできない。
[編集] 参考文献
- ^ Hall, E. T., "The Hidden Dimension", Doubleday & Company, 1966. 邦訳: ホール, E. T. (日高 敏隆、佐藤信行 訳), "かくれた次元", みすず書房, 1970.
- ^ 西出 和彦, "人と人との間の距離", 人間の心理・生態からの建築計画 (1), 建築と実務, No. 5, pp. 95--99, 1985.
- ^ 松原 孝志, 臼杵 正郎, 杉山 公造, 西本 一志, "言い訳オブジェクトとサイバー囲炉裏: 共有インフォーマル空間におけるコミュニケーションを触発するメディアの提案", 情報処理学会論文誌 Vol. 44, No. 12, pp. 3174--3187, 2003.