岩田準一
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岩田準一(いわたじゅんいち:1900年-1945年)は、三重県鳥羽市生まれの画家・風俗研究家。
早くから画才を発揮し、竹久夢二に師事。夢二の代作を務め、また夢二本人から「日本一の夢二通」と称される。江戸川乱歩の小説『パノラマ島奇談』『踊る一寸法師』『鏡地獄』の挿絵を担当。その美青年ぶりから乱歩の最高傑作『孤島の鬼』の美青年・諸戸道雄のモデルといわれる。同作の発想のヒントを乱歩に与えたのも準一である。
ライフワークは日本の男色文献研究で、乱歩は同好の友でありライバルでもあった。『孤島の鬼』は二人の男色文献あさりへの情熱が頂点に達した頃に書かれた作品で、同性愛がテーマに描かれたのも乱歩のごく自然な感情の発露といえる。準一の論考『本朝男色考』は南方熊楠も絶賛し、長きにわたり二人の間には男色に関する論議が往復書簡にて交わされた。準一は、日本のいわば影の歴史に光を当てた先駆的存在といえる。
また、民俗研究家として柳田國男主宰の『郷土研究』に寄稿、渋沢敬三主宰の民俗学会アチック・ミュージアムの会員にもなり、志摩地方の民俗採取に最初の鍬を入れた。1945年(昭和20年)、胃潰瘍による出血のため没。享年45。
主著に『本朝男色考 男色文献書志 合本』(原書房)。『本朝男色考』は英語・仏語にも翻訳出版されている。
鳥羽市には準一の生家を改築した「鳥羽みなとまち文学館 岩田準一と乱歩・夢二館」がある。
なお、孫の岩田準子は、乱歩と準一の危うい関係を描いた小説『二青年図』(新潮社)で作家デビューしている。