形質
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形質(けいしつ)とは、生物が示し、遺伝によって子孫に伝えられる性質。(英語 trait または character)
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[編集] 定義・概要
形質とは、生物が示し、遺伝によって子孫に伝えられる性質のこと。例えば、次のようなものがある。
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- 形、色、大きさなどの外観(形態)として観察される性質
- 花が咲く時期(開花期)など観察できる生理的な性質
- 果実の甘さ(糖含量などの成分)や病気などに対する抵抗性などの外観から判りにくい生理的な性質
形質が実際に表現されたものを表現型という。両者は混同されがちだが、形質は性質そのものであり、表現型は形質が実現化したものである。例えば、人の「ABO式血液型」は形質であり、個人の「A型・B型・AB型・O型」が表現型である。
元々は種を見分けるための形態を意味する言葉であった。遺伝しない表現型を獲得形質(ラマルク参照)といい、遺伝する表現型を遺伝形質といった時代があったが、現在は遺伝する性質のみ形質と呼ぶ。
[編集] 質的形質と量的形質
動植物の形質を量的形質と質的形質とに大別する分類がある。
- 量的形質
- 人間の身長や木に実る果実数のように、連続した実数あるいは整数で示される形質。複数染色体上の多数の遺伝子座の影響を受ける。
- 従来の遺伝学では、作用力が小さい多数の遺伝子(微働遺伝子あるいはポリジーン)によって支配されると説明されてきた。近年広まった量的形質遺伝子座(QTL)の概念を用いると、微働遺伝子はQTLに座乗する遺伝子とも説明できる。
なお、量的あるいは質的という区分は、便宜上の区分と言ってもいい。一つの形質が、大きな作用を持つ遺伝子(主働遺伝子)と同時に微働遺伝子に支配されている場合もある。そのとき、主働遺伝子だけに着目するなら質的な取り扱いができ、微働遺伝子も同時に着目するなら量的な取り扱いをすることになる。
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- 一つの形質が質的でも量的でもある例 イネ品種の米のアミロース含量(ご飯の粘り気)
[編集] 形質発現
形質は遺伝するものであるから、その元の情報は遺伝子にある。個体が持つ遺伝子型が表現型として現れることを形質発現または単に発現という。形質発現は、遺伝子の影響だけではなく、環境の影響も同時に受ける。形態的形質が環境に影響を受け、表現型が変わることを表現型の可塑性という。草木の高さのように表現型が測定値として示されるような形質では、測定値のばらつきの原因の1つとしてとして環境が作用する。
(注)分子生物学分野では、遺伝子から情報が写し取られ生体機能を持つ分子(タンパク質・rRNA・tRNA)が合成されること(遺伝子発現)を単に発現と呼ぶ。
[編集] 関連項目
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