挨拶
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挨拶(あいさつ)とは、礼儀として行う言葉や動作。又、式典などで儀礼的に述べる言葉。
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[編集] 社会的な位置づけ
多くの社会で、人間関係を円滑にする上で必須の手続きと見做されている。それ故、挨拶をしなければ、それはそのまま他者との摩擦に発展し兼ねない。
知人間では好感と敬意の表明とも捉えられており、特に笑顔との併用が歓迎されるので、無表情または無感情な挨拶や、そもそも挨拶さえしないという態度は、「この人は怒っている」「私を嫌っている」などと解釈され得る。「挨拶をしろ」と憤懣を向けられる事もある。初めて顔を合わせる人間に挨拶をしない場合も、相手は「この人は私と関わりを持つ事を望んでいない」「無礼な人間だ」などと考え、落ち込んだり気分を害したりする。
こういった性質から、挨拶は社会的に強く奨励されている。家庭内の躾や学校教育においても挨拶は慣習化されており、人々は「挨拶をするのが当たり前」という環境で育つ。挨拶をしない自由も一応存在しているが、そういった自由を行使する事がはばかられるムードがあらゆる場所で既に出来上がっており、またそういった自由を声高に主張する運動もそもそも絶無で、挨拶の是非が討論の対象となる事はない。それほど挨拶は普遍的に受け入れられている。
挨拶という行為そのものに即時的な利益は期待できない。しかし長期的に見た場合、挨拶を一切しない生き方は他者からの好感が得られにくく、また他者との摩擦が生じやすい。その為、挨拶という習慣は、戦術的意義よりも戦略的意義が大きいと考えられている。特に挨拶のコスト(挨拶に使われる時間や労力)が挨拶の利益(摩擦回避や好意)より小さいと感じられる者にとって、挨拶は費用対効果が大きい経済的な投資である。
ウィキペディア内においても、挨拶を望ましいものと捉える利用者達がおり、あいさつ同好会というコミュニティが形成されている。
[編集] 「挨拶」という日本語の由来
元々禅宗の用語であった。修行者が互いの修行の成果を質問し合う事によって悟りや知識見識等の深さ浅さを、確認すること。そこから民間へと広まり、人と会った時にとりかわす儀礼的な動作や言葉・応対などを言うようになった。
[編集] 基本的な挨拶の言葉
[編集] 出会い
- おはようございます、おはよう(朝、起床の時)
- ごく一般的には「こんにちは」(昼)
- こんばんは(夜)
- はじめまして(初めて会う人に)
- お久しぶりです、御無沙汰しております(久しく会う人に)
- やあ、よう、よっ、
- 押忍
[編集] 別れ
- さようなら、さよなら、さらば、あばよ
- ごきげんよう
- またね、また○○(○に来週や今度、いつかなどが入る)
- じゃ、じゃあね、それじゃ、じゃあ近いうちに、
- では、それでは、
- バイバイ(bye-bye)、バーイ
- よいお年を(年末のみ)
[編集] 礼
- (どうも)ありがとうございます、ありがとうございました、ありがとう、
- すみません(自分の利益のために相手が不利益を被る場合に使用する)
- サンキュー(thank you、親しい人に対する感謝)
- どういたしまして、何でもないです(感謝された人)
[編集] 祝福
- おめでとうございます、おめでとう
[編集] 食事
- いただきます(食前)
- ごちそうさまでした(食後)
[編集] 訪問
- お邪魔します
- 失礼します
- ごめん下さい
[編集] 退出
- お邪魔しました
- 失礼しました
[編集] 外出
- 行ってらっしゃい、気を付けて(見送る人)
- 行って来ます、行って参ります(出掛ける人)
[編集] 帰宅
- ただいま(帰る人)
- お帰りなさい、お帰り(出迎える人)
[編集] 謝罪
- 申し訳ありませんでした(より強い謝罪は最初に「誠に」と付ける)、申し訳ありません、申し訳無い
- ごめんなさい、ごめん
- すみませんでした、すみません、すまん、すいません、[1]
- お騒がせしました、ご迷惑をお掛けしました
[編集] その他
- お休みなさい、お休み(睡眠前、夜間の退出時)
- もしもし(呼びかけ、とくに電話でただしビジネスマナーでは好ましくない表現とされる)【感動詞】
- 「申し(もうし)」という呼びかけが短くなった「もし」を二つ重ねたもの。今でも伸ばして「もしもーし(もし申し)」とも。
[編集] 文章での挨拶
文章での挨拶は、手紙や電子メールの文章で用いられる。挨拶文とも呼ばれる。日本においては手紙を出すことは、直接会うことができないために出される略式の行為という概念がある。
前項で示した口頭で用いる挨拶の他、書き言葉でしか用いられない表現や、挨拶の決まりがある。日本の書面による挨拶は本文を述べる前に「頭語」、「前文」、本文を述べた後に「末文」、「結語」といわれる挨拶を用いる。宛先への敬意を示すため、さらに「脇付」を付けることもある。ただし電子メールでは簡潔さが重要視されるため、簡単な挨拶を文頭や文末に付記するだけでよいという慣習になっている。
[編集] 頭語・結語
口頭の挨拶の「こんにちは」などと同じ役割をもつ言葉で、文頭に付するものを頭語、文末に付するものを結語と呼ぶ。頭語にはそれぞれ呼応する結語がある。
- ※この例では「頭語 :: 結語」という体裁で例を示す
- 拝啓 :: 敬具 - どちらも「つつしんで申し上げる」の意を持つ
- 前略 :: 草々、かしこ - 急ぎの場合用いる
- 復啓 :: 敬具、かしこ - 返信に用いる
- 再啓 :: 敬具、かしこ - 返信を待たずに再度送る場合に用いる
[編集] 前文
前文では、時候の挨拶、相手の近況確認、自分の近況報告などを記す。ビジネス上の文章では、近況報告はあまりせず、日頃の感謝の意を表すのが一般的である。また、頭語に「前略」を用いた場合、前文を省略、または簡単に済ましても失礼にはならない。
- 時候の挨拶 - 季節・気候の挨拶
- 初春の候、仲秋の候、厳冬の候 など - 候(こう)は時候や季候の意
- 暑さもようやく峠を越え など - 近々の気候を感じたまま述べる
- 時下 - 季節を問わず用いる。この頃の意
- 近況確認・近況報告
- ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
- 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます
- 感謝の挨拶
- 平素は格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます
[編集] 末文
末文では、用件の取りまとめ、相手の健康祈願、関係継続のお願い、返信のお願いなどを記す。
- 用件まとめ
- まずは略儀ながら書面にてお礼申し上げます など
- 健康祈願
- ご自愛のほどお祈り申し上げます など
- 関係継続のお願い
- 今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします など
- 返信のお願い
- お忙しいところ恐縮ですが、お返事賜りますようお願い申し上げます など
[編集] 脚注
- ^ 「すいません」は「済みません」の変化形。但し、現在は広まり一般的になってきている。